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<独占公開、W杯の真実> 矢野大輔・ザックジャパン通訳日記 ~運命のコロンビア戦とザックジャパン最後の1日~ 

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photograph byHirofumi Kamaya

posted2014/11/13 11:30

19冊にのぼる大学ノートに綴られた日本代表4年間の記録。
そこには今まで明かされることのなかったザッケローニ監督の
真意や選手との対話が克明に記されていた。貴重な資料の中から
ブラジルW杯に挑んだザックジャパン激闘の日々を公開する。

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本日発売のNumber865号「BASEBALL FINAL 2014」では、
矢野大輔通訳による短期集中連載「ザックジャパン通訳日記」
最終回が掲載されています。
今回は、コロンビア戦翌日のザックジャパン最後の一日、監督や選手、
そして矢野通訳自身も涙した解散式の模様が明らかになります。

NumberWebでは865号で掲載したコロンビア戦終了後のロッカールームと、
その翌日のザックジャパン解散の記録を一部公開します!

<2014年6月24日(火)>

 試合終了。キャプテンが泣いている。皆泣いている。放心状態。スタッフ含めて全員がそう。僕も泣きそうになる。皆が泣いているのを見るとなおさら。

 ロッカールーム。監督は、うなだれる選手たちと一緒に悔しさをにじませながら立っている。ここでも気持ちは一つ。悔しいに決まっている。それ以外何もない。皆が皆を支え合うように握手や抱擁をする。言葉は出ない。

 記者会見。この4年間、仕事、プライベートでの日本はどうだったか、との問いに監督が答えた。

「言葉にできない。4年前、日本代表監督に就任した時には想像もしなかった。サッカー、仕事、文化、人々、そのすべてが素晴らしかった」

 涙が溢れてきた。監督とともに過ごした4年間が、その一瞬のうちにフラッシュバックしてきた。

 電話で監督から「日本に戻る準備はできたか?」と言われたこと、新幹線の中でサッカーのイロハを教えてくれたこと、ザッケローニ用語漬けにされたこと、数々のJ視察、4回祝った監督の誕生日、試合に負けた後の車内で敗因分析を何十回も聞いたこと、子どもたちのサッカーを観ながら「想像するんだ。いつか自分が日本代表監督になって、この中の子どもを指導する立場になることを」と言ってくれたこと、日々エスプレッソを飲みながらの談笑、イタリアの政治、経済について語り合ったこと、監督の数々のエピソード、秘密の話、人生の哲学。全部、全部……。

僕たちのW杯は終わったが……。

 今、クイアバからカンピーナスに向かう飛行機の中でこの日記を書いている。

 4年間、いろいろなことがあった。楽しかったこと、嬉しかったこと、苦しかったこと、悩んだこと、嫌だったこと。ここに思いを綴ってきた。日本代表通訳を務める前なら非現実的に思えるような世界に身を置いて、笑ったり、うなされたりしているうちに終わってしまった。

 もっとW杯で戦いたかった――。その悔しい気持ちが一番。

 8年前のドイツW杯を現地で3試合見て、「もう日本が負けるのは見たくない」「W杯で日本が活躍するのを見たい」「スタッフとしてW杯に行く」と強く思った記憶がある。

 スタッフとしてW杯に行くという、その夢は叶った。しかし、これからだと思う。もっともっと、夢を持たないと。大きな夢は、一旦心の中にしまっておく。そして行動しなければ。これまでやってきたみたいに。

 日本代表とザッケローニさんと過ごしたこの4年間は、僕の財産である。本当に人との出会いに恵まれているなとつくづく思う。仲良くなったスタッフ、選手たちとは今後も友人として付き合っていくことになるだろう。

 こうして僕たちのW杯が終わり、僕は明日もこの日記をつけるのだろうか? そこに意味を見出せるのだろうか?

【次ページ】 「4年間のサイクルに終止符を打つことを皆に伝えたい」

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