沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER

天皇賞・秋のスピルバーグに思う、
重賞未勝利馬がなぜGIを勝つのか? 

text by

島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

PROFILE

photograph byYuji Takahashi

posted2014/11/04 11:10

天皇賞・秋のスピルバーグに思う、重賞未勝利馬がなぜGIを勝つのか?<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

上がり3ハロン33秒7というタイムで豪快に差し切ったスピルバーグ。ジャパンカップでのハープスターとの対決が注目される。

藤沢師「東京ではいつも上手に走っていたので」

 ゴール前の切れ味は、さすがトーセンラーの全弟と思わせる鋭さだった。これで東京コースは6-1-2-1。唯一の着外は体調が整わず14着に終わったダービーだから、「なかったこと」に評価していい。兄は「京都の外回りコース専用」なのに、こちらは「東京の鬼」というところが面白い。

「東京ではいつも上手に走っていたので、きょうも楽しみにしていました」

 そう話す藤沢調教師にとって、これが5度目の秋の盾制覇となった。レース前の様子に関して問われると、こう答えた。

「ああいうおっとりした性格なので、いつもと同じような感じでしたね」

 つまり、パドックで見せた変わった歩き方は、この馬なりにリラックスしていることを示すものだったわけだ。

4戦連続で重賞未勝利馬のGI制覇という現象。

「距離は2000mぐらいがベストかもしれませんが、折り合いの心配はない。次は、東京の2400mになると思います」

 と、次走はジャパンカップに向かうことを示唆した。

 これがスピルバーグにとって、GI初勝利であると同時に重賞初勝利でもあった。今秋のGIは、スプリンターズステークスのスノードラゴン、秋華賞のショウナンパンドラ、菊花賞のトーホウジャッカルにつづいてスピルバーグと、4戦連続で重賞未勝利馬が勝つという珍しい現象が起きている。

 体質が弱くて順調に使えなかったり、成長の遅かった素質馬がようやく力を出せるようになったことが、こうした結果につながっているのだろう。スピルバーグもそうだ。

「もともといい馬体をしていたのですが、以前はそれを持て余していた。今年の春も実はもう一戦したかったのですが、つづけて使うと疲れが溜まってしまうので、無理ができないんです」と藤沢調教師。

 2着のジェンティルドンナは絶好位の3番手の内でレースを進め、直線、最内の狭いところをこじあけるようにして伸び、底力を見せた。昨年につづく銀メダルに終わったものの、総獲得賞金は、ブエナビスタを抜いて牝馬歴代1位の14億8357万8400円となった。名実ともに「歴史的名牝」となった今、ジャパンカップ3連覇という偉業が現実味を持って近づいてきたのではないか。

【次ページ】 一番人気イスラボニータに何が起こったのか?

BACK 1 2 3 NEXT
スピルバーグ
カレンブラックヒル
ジェンティルドンナ
イスラボニータ

競馬の前後の記事

ページトップ