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“ジャイアンツ時代”を築いた名GM。
MLBの潮流は、資金力よりも「育成」? 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2014/11/02 10:40

“ジャイアンツ時代”を築いた名GM。MLBの潮流は、資金力よりも「育成」?<Number Web> photograph by Getty Images

ワールドシリーズを制し、勝者の証であるコミッショナーズ・トロフィーを手に微笑む、ジャイアンツのブライアン・サビーンGM(写真右)。勝ちきれなかったチームを見事な手腕で常勝集団へと変貌させた。

対照的な動きを見せた、“金満”の2チーム。

 プレーオフ期間中、“金満チーム”を代表するドジャースとヤンキースの2チームが対照的な動きをみせた。

 まずヤンキースは10月10日に、ブライアン・キャッシュマンGMと3年間の契約延長を発表した。

 キャッシュマンGMといえば、1998年に同職に就任以来、ずっとヤンキースの現場を指揮してきた人物で、次から次へと大型契約で他チームのスター選手をかき集めてきた人物だ。

 しかし1998年からの3連覇を達成して以降は、ワールドシリーズで勝ったのは2009年の1回のみ。しかも、3連覇当時の主力選手たちはデレク・ジーター選手やマリアノ・リベラ投手らの生え抜き組で、彼らをリクルートし育成したのはキャッシュマンGMの功績ではない。

 そして現在のヤンキースでは、なかなか生え抜きのスター選手が登場していない。ロビンソン・カノのような選手が現われても、FAでチームを去ってしまった。

 結局、最後の生え抜きスター選手のジーターが今年引退し、栄華を誇った“ヤンキース王朝”の終焉を印象づけている。

 果たして現在のヤンキースを再建するために、キャッシュマンGMが最適の人物なのか、疑問の余地が残るところだ。

ドジャースが選択した、脱金満の行方や如何に。

 一方のドジャースは、2012年にマーク・ウォルターオーナーがチームを買収した後はヤンキース以上の散在を続け、次々に高額選手を獲得。今シーズンは年俸総額でヤンキースを抜いて1位になった。しかし2013、2014年とプレーオフ進出は果たしているものの、いずれもワールドシリーズ出場までは至ってない。

 そしてプレーオフ敗退直後の10月14日、ドジャースはアンドリュー・フリードマン氏の野球運営担当社長就任と、ネッド・コレッティGMの特別相談役就任という人事を発表した。

 つまり、現場の最高責任者の交代人事を断行したのだ。

 しかもフリードマン氏といえば、2008年から7年間レイズの野球運営担当の上席副社長を務め、限られた年俸総額の中で若手選手を育成しながら7年間で4度チームをプレーオフに進出させるなど、弱小チームを常勝チームに変貌させた立役者だ。

 フリードマン氏が今後どのような舵取りをしていくのかに、早くも注目が集まっている。

 まったく正反対の選択をした、メジャー屈指の人気を誇る東西の雄、ヤンキースとドジャース。果たして先にワールドシリーズに辿り着けるのはどちらなのだろうか。

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