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今年もパ・リーグが一枚上手か。
各球団の2014年ドラフトを完全評価! 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byKyodo News

posted2014/10/24 11:55

今年もパ・リーグが一枚上手か。各球団の2014年ドラフトを完全評価!<Number Web> photograph by Kyodo News

最多の4球団が競合した早稲田大学の有原航平は、日本ハムが交渉権を獲得した。「その年1番の選手を指名する」というスタイルは健在だ。

2度抽選で敗れた阪神だが、全体的には○。

 阪神は有原の抽選で敗れ、外れ1位で入札した山崎康晃(亜大・投手)の抽選にも敗れ「ドラフト下手」の風評が乱れ飛びそうだが、全体的には私はいい指名だと思った。外れ外れ1位で社会人の本格派左腕・横山雄哉(新日鉄住金鹿島)の交渉権を獲得。ポジションの違いこそあれ、今季のセ・リーグ最多安打を記録した山田哲人(ヤクルト・二塁手)も外れ外れ1位での入団なので、がっかりすることはない。

 ストレートは140km台中盤が最速と平凡だが、これを速く見せる変化球のキレが真骨頂である。さらにボールの出どころが見えにくいという長所がある。バント処理で見せるフィールディングの動きもよく、すべてのプレーに神経が行き届いているのが魅力。

 2位の石崎剛(新日鉄住金鹿島・投手)も横山と同じチームの所属で、こちらは完成度の高さより短いイニングを150km前後のストレートで押しまくるパワーピッチングが持ち味だ。茨城・三和高校時代もドラフト1位候補だったが、社会人入り後、故障などで低迷、ようやく出場し出したのが昨年から。もともとの素質が違ったということだろう。上手を横手に変えてもストレートの迫力は変らず、今年の都市対抗に富士重工業の補強選手として出場、準優勝に大きく貢献した。

 さらに即戦力の魅力に富んでいるのが、3位の江越大賀(駒澤大・外野手)。アスリートタイプ特有の走る姿(俊足)と投げる姿(強肩)の美しさを備え、この部分はプロの中に入っても間違いなく上位。課題はバッティングの安定感だけだったが、この秋は打率.357(リーグ4位)を記録して駒大の13年ぶりの優勝に大きく貢献、3回目のベストナインに輝いた。

ソフトバンクの指名に感じる「思想」。

 ソフトバンクは高校生を1~4位で指名し、5位は低迷する島袋洋奨(中央大・投手)を指名した。まず、1位の松本裕樹(盛岡大付・投手)は夏前から「投げては150kmの剛腕、打っては通算54本塁打」という“二刀流”で話題になっていた。ところが夏の岩手大会決勝で右ヒジの違和感に襲われ、甲子園に出場したものの変化球でかわすピッチングに終始し、私は正直がっかりした。

 少し前、ソフトバンクの永山勝・アマスカウトチーフは「ヒジの故障と言ってもトミー・ジョン手術すればリハビリを経ても2年で帰ってこられるのだから神経質になることはない」と話していた。私はてっきり安楽のことを言っていると思っていたが、この指名を見て狙いは松本にあったのかと得心がいった。モノになったときのデカさに期待したい。

 2位の栗原陵矢(春江工)は日本ハム2位の清水と並ぶ、超高校級捕手である。無名校を攻守で牽引し、明治神宮大会、選抜甲子園大会に導いた実力は、強豪校に所属する清水以上と言っていいかもしれない。明治神宮大会ではイニング間で1.8秒台の二塁スローイングを何度も計測。さらに一塁けん制ではプロも真っ青の1.49秒を計測、当時まだ1年生でありながら私は上位指名を確信した。

 3位以下では九州に縁のある古沢勝吾(九州国際大付・遊撃手)、笠谷俊介(大分商・投手)、島袋を指名、「うまい」というより、どのようにチーム作りを進めていくのかという「思想」を感じる指名だった。

【次ページ】 ロッテはチーム作りに大きなプラスの変化が。

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