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広島・野村監督が最後に貫いたもの。
1番菊池、2番丸という「理想」の打順。  

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/10/14 11:20

広島・野村監督が最後に貫いたもの。1番菊池、2番丸という「理想」の打順。 <Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

広島を2年連続でAクラス入りさせた野村謙二郎監督。軍隊式の練習も影を潜め、若い選手が伸び伸びと力を発揮する環境を整えたのも功績の1つだ。

「しゃあない。目一杯やらせてもらったからね」

 だから野村監督は最後まで、その部分で自分の理想を貫いた。

 今季限りでユニフォームを脱ぐことと、この決断がまったく無関係だったかと言えば、そうとは言えないのではないだろうか。

 だが結果的に、丸は進塁打も打てずに、一邪飛に倒れた。苦し紛れのような菊池の二盗も失敗して、広島は無死の走者をホームに還せず、そうしてファイナルステージへの道は閉ざされたのである。

「1点がとれなかったな」

 試合後の甲子園球場の三塁側通路。サバサバとした表情で野村監督は最後のシリーズを振り返った。

「点を取れんとは思わなかった。あと1本が出ない。この課題を打開していくしかないとミーティングでは話した」

 このシリーズで広島敗退の最大のポイントは先発させた1、2番コンビが2試合で18打数1安打という不調に陥ったことだろう。そうしてこれが2試合21イニングス無得点という結末に至った訳である。

 これは菊池と丸という選手が、このチームでどれだけの大きな存在なのか、を改めて示す結果でもあると同時に、野村監督にとっては自分がかけた勝負に敗れたということだった。

「まあ、しゃあない。目一杯やらせてもらったからね」

 一番信頼していた選手にかけ、最後まで理想を追い求めたということだ。

 だから監督の言葉は、敗れても爽やかである。

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