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ユナイテッドの引力を司った者。
~『アレックス・ファーガソン自伝』~ 

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

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photograph byRyo Suzuki

posted2014/09/30 10:00

ユナイテッドの引力を司った者。~『アレックス・ファーガソン自伝』~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki

『アレックス・ファーガソン自伝』アレックス・ファーガソン著 小林玲子訳 日本文芸社 2300円+税

 結局のところ、チームを率いる者の人間力ということなのだろうか。前輪駆動のスーパーカーに変貌を遂げた今季のマンチェスター・ユナイテッド。生え抜きや若手が大量放出された一方で、エンジンがシャーシに馴染み切っていない様な不安定な戦いが続いている。

 そんな状況から、英国でベストセラーとなったこのバイオグラフィを見てみると面白い。ファーガソンの前作『マネージング・マイ・ライフ』はグラスゴーでの日々やアバディーンでの監督時代も描かれたが、今作はほぼユナイテッドでの仕事に話を集中。数々の伝説的なゲームや、選手との人間関係におけるファーガソン的真実を明らかにしてくれる。

 2001年の引退撤回騒動。モスクワで行われた'08年のチャンピオンズリ―グ決勝でのチェルシー戦。サッカーファンにとっては、懐かしいあの時、あの場面のバックヤードが次々と明らかになる。

ベッカムもロナウドも、常にファーガソンの掌の上。

 選手との個人的な思い出も、前評判通りの赤裸々告白。きっと何の遠慮もしなくてよい立ち位置なのだろうな。ベッカムもファーディナンドもC・ロナウドも、常にファーガソンの掌の上。あくまでもファーガソンと彼が心血を注いだクラブが中心にあり、サーの強烈なキャラクターがチームの引力を司るのだ。

 そんな彼がユナイテッドを去り、ファーガソンのカラーが日々薄くなってきている。彼ならそれも「ユナイテッドの歴史の一日」というのだろうが、長大な物語はまだ続くのか、尻すぼみになるのか? 少なくとも、もうベンチに強烈な個性が座っていないことは確かなのだ。

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