SCORE CARDBACK NUMBER
ハミルトンの反撃開始でロズベルグにかかる重圧。
~超高速モンツァで仕掛けた心理戦~
text by

今宮純Jun Imamiya
photograph byAFLO
posted2014/09/19 10:00

シケイン手前でロズベルグがミスをした隙にハミルトンが首位を奪って最速ラップを記録。
これぞ“心理戦”の勝利だ。第13戦イタリアGPは、スタートで出遅れたL・ハミルトンが追い込み、首位N・ロズベルグのミスを誘って逆転。ハミルトンは今季6勝目で初タイトルを獲得した'08年の5勝を超えた。しかも、ポールポジション&決勝最速ラップ樹立のパーフェクトウィンは第2戦マレーシア以来。ついにハミルトンの反撃が始まった。
一つ違いの小林可夢偉は言う。「アイツは爆弾ですよ、爆発したらとんでもない力を出してくる」。元チームメイトだったF・アロンソも「S・ベッテルではなく、ルイス(ハミルトン)が今コース上のベスト・ドライバーだ」と称賛する。
超高速サーキットのモンツァでは、1070mのストレートを最高速で抜け、右、左にきつく曲がるシケインに飛び込む。速度差が最も大きく、レンタカーでの下見でも、広い高速道路から急に右折して一方通行の狭い路地に飛び込むような感覚。どこで減速を終え、いつステアリングを切るのか、時速100km程度でも「ターニングポイント」を探るのは至難の業だ。今回、このシケイン手前212m地点の最高速は、5位入賞のD・リカルドが時速362.1kmを記録。距離140m、2.6秒の間で時速約85kmにまで減速せねばならない。タイミングがずれると、9周目と29周目にロズベルグが犯したように、クラッシュ回避のためエスケープロードを徐行するハメになる。
無線指令に反したスパートでロズベルグの焦りを誘発。
逃げるロズベルグにまるで魔法をかけるかの如く猛追するハミルトン。9周目の相手のミスで2秒差に接近し、さらに1秒台に詰め寄った。25周目にピットストップを終えると、「タイヤを労わって終盤に備えよ」との無線指令に反し、猛然とスパート。ニュータイヤのグリップを活かし、27周目に1.384秒差、28周目で0.746秒差にまで急接近した。
ロズベルグはチームから「ここでは減速に注意しろ。無理にタイヤをロックさせると異常摩耗させてピットで交換になるから」と言われていたが、29周目に右フロントタイヤを少しロックさせ、再びエスケープロードへ。敵を抜くことなく首位に立ったハミルトンは、この29周目で最速ラップを記録した。
残る6戦で22点差。タイトル獲得へのプレッシャーは、どちらかといえば守るロズベルグにかかっているように思える。