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U-16代表が日韓戦で完敗――。
日本流ポゼッションサッカーの未来。 

text by

浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

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photograph byFAR EAST PRESS/AFLO

posted2014/09/16 16:30

U-16代表が日韓戦で完敗――。日本流ポゼッションサッカーの未来。<Number Web> photograph by FAR EAST PRESS/AFLO

昨年U-17W杯に出場した際の吉武監督(手前)。その後もスタイルを変えることなく、育成年代のチームを作っている。

パスワーク、フィジカルでも負けていなかったが……。

 日本の戦いのベースとなるパスワークにはかなりの進歩が見えた。

 韓国がサイドでプレスをかけ、囲い込みに来たところでもかいくぐることができていた。また、縦パスを入れたところでカットされたとしても、セカンドボールを拾うこともできていた。相手がカウンターに出ようとするところをインターセプトで奪い返す場面も多く、予測に基づいた出足という点で日本は韓国を上回っていた。

 日本の弱点としてよく指摘されるフィジカル要素においても、体格で韓国に劣っていたのは事実だが、当たり負けはほとんどしておらず、ヘディングの競り合いにしても互角以上にやれていた。1対1の局面に目を向けても、攻撃時は十分に勝負ができていたと思う。巧みなターンで相手と入れ替わる場面は何度も見られ、うまく体を入れながらボールをキープすることもできていた。

 問題だったのは、守備時の1対1である。

主な敗因は、守備における個の能力の低さ。

 すぐに味方のサポートを受けられる状態であれば問題はなくとも、オープンスペースで1対1になるとどうしても止め切れず、結果、自陣でのファールを増やしてしまう。

 周りの選手もそれが分かっているから、どうしてもカバーの意識が強くなり、自分がマークすべき選手をフリーにしてしまう。韓国戦での1点目は、まさにこうした現象の連続で失ったものだ。

 つまり、守備における個の能力こそが第一の課題であり、敗因であった。

 ここを何とかしない限り、組織力を高めることで失点を減らすのはどうやっても限界があるだろう。しかも一朝一夕に解消できる課題ではないだけに、育成年代からの地道な取り組みが求められる。

 ただし、こうした課題が単に「組織力の限界。個の力を高めなければならない」という話にすり替わり、「みんなでやる」ポゼッションサッカー自体の否定にまで及ぶとなると、敗因検証は核心を見失ってしまう。

 昨秋、UAEで行われたU-17ワールドカップのときもそうだった。

 この大会の決勝トーナメント1回戦で日本はスウェーデンのカウンター2発に沈み、1-2で敗れているのだが、当時、ポゼッションで圧倒する日本のサッカーは現地で大きな話題となり、大会関係者や海外メディアからも多くの称賛を受けた。

 しかし、その一方で国内には、ポゼッションサッカーに批判的な意見も少なくなかった。

【次ページ】 日本サッカーの未来のためにも拙速な方針転換は禁物。

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吉武博文

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