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動きすぎず、しかし得点機は大胆に。
柴崎岳が小笠原満男から学んだこと。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/09/15 10:50

動きすぎず、しかし得点機は大胆に。柴崎岳が小笠原満男から学んだこと。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

運動量を誇示するわけではなく、しかし大事なところにいる柴崎岳。「遠藤の後継者」という肩書きが取れたときが、彼が本当に代表の主力になった時なのかもしれない。

「“試合に対するスタンス”を大事にしたかった」

 そのタイミングで、アギーレジャパンが始動。「過去の実績は関係ない」と語る指揮官の前で、その自信をぶつける絶好機が訪れた。

 初戦のウルグアイ戦では出番がなかった柴崎だったが、第2戦のベネズエラ戦では左MFとして先発する。前半はベネズエラのハイプレッシャーに戸惑ったように、日本はミスを連発。柴崎もピンチを招くパスミスがいくつか見られた。同点で迎えた後半は、ベネズエラがペースダウンしたこともあり、日本が試合を支配した。しかし、GK川島のミスで2失点目を喫し、試合は2-2で終了。

「試合にはいい形で入れたと思います。ボールタッチを多くしながら、ある程度自分の考えているプレーは表現できた。当然ミスもありました。でも僕としては、プレーというよりは、“試合に対するスタンス” を大事にしたいと思っていました。そこは90分通してぶれずにできたと思います」

 試合後のミックスゾーンに現れた柴崎から、代表初出場初ゴールの喜びは微塵も漂ってこなかった。質問者の顔をちらりと見て、堅い表情で空を見つめながら、淡々と話す。

「初出場ということもあるので、自分が意識していないところで、堅さが出ることもあるかもしれないけれど、とりあえず、精力的にアクティブに動いて、自分のプレーを表現したいなと思っていました。ボールを持つところ持たないところ、どういう状況においても、自分の判断のもとで、積極的にプレーしたいと思っていたので、そこはできたと思います」

アギーレが求める「自主性」を身につけた柴崎。

 アギーレジャパンの基本布陣は4-3-3。しかしそのポジションの流動性が非常に高く、「選手の自主性」に任されている部分も少なくはない。選手間でコミュニケーションを深めながら構成力や連動性を高めることが必要になるが、その基盤となるのは選手個々の決断だ。周りを気づかいながらプレーする前に、自身が素早く的確な判断で動き出し、プレーすることがチームの原動力となる。行動が意思表示となり、周りとの連携が深まる結果を導くのだ。

 柴崎の言葉からは、そんな意図が感じられた。またプレー以上に、“スタンス”を大事にしたという独特な思考、そして彼が意識し、披露した「積極性」は、鹿島の中心選手として、身につけた自信が源泉となっているのだろう。

【次ページ】 鹿島のDNAが透ける、プロとしての価値観。

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