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グリエルがFA枠なら、メンドーサは?
キューバとの今後の“関係”を考える。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/09/05 10:40
9月3日時点でグリエルは、出場34試合ながら打率.360、OPSはなんと1.051という驚異的な数字をたたき出している。どこまで現在のペースで打ち続けるのだろうか。
巨人の20歳、メンドーサが示すもう一つの関係性。
ただ、同時に今回の選手解禁でもう一つのスタイルとしてあるのが、巨人が獲得したエクトル・メンドーサ投手のケースだった。
メンドーサはまだ20歳の右腕で、190cmの長身から常時150kmのストレートを投げる豪腕投手というふれこみだ。
ただ、この投手の獲得にはセペダやグリエル、デスパイネとは違った意味がある。
メンドーサは大学に通いながら国内リーグでも投げてはいるが、まだまだ主力投手とは言えないクラスの投手なのである。
「ポテンシャルはかなり高いが、すべてが荒削り。ただ速い球を投げる力はあるので、日本でうまく育てられれば面白い存在になる可能性を秘めている」(巨人関係者)
実はここが、キューバ側と巨人の利害が一致している部分なのである。
グリエルがFA枠だとすれば、メンドーサは育成枠。
ここ数年のキューバは、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも優勝を逃し、「アマ最強」を誇ったかつての勢いがなくなっているのは確かだ。その要因の一つとして、本国では投手力の低下を挙げる声が強く、国際大会を投手力で勝ち抜いてきた日本に学ぶべきという意見が強くあるのだという。
そのため過去には、日本流の指導法を取り入れるべく小谷正勝氏(現ロッテ2軍投手コーチ)を招聘して技術指導を仰いだりもしている。そうして投手力の強化を目指すキューバと、素質ある若手を育てて戦力にする可能性を模索する日本の思惑が一致したのが、メンドーサのケースだったというわけだ。
グリエルやセペダがFA枠の選手だとすれば、こちらはいわば日本でいう育成枠のようなもの。日本できちっと投手が育つ実績を作れれば、キューバ球界にとってもプラスとなって、将来的には投手派遣の一つのシステムができる。そういう選手を何人か抱えられれば、日本のチームにとっても、こちらのケースがキューバ選手獲得の中心となっていく可能性も考えられるのである。
本当のキューバの実力選手であるグリエルを見るのは楽しい。ただ、長いスパンでキューバとの交流を考えたとき、注目すべきは目先の華やかさや戦力ではないのかもしれない。
そう考えると、メンドーサがどういう投手として日本のマウンドを踏めるようになるのか、にこそ注目をしたいところだ。