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ドルトムント復帰は“運命”だった。
香川真司、不運の2年間と古巣の絆。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2014/09/01 11:20

ドルトムント復帰は“運命”だった。香川真司、不運の2年間と古巣の絆。<Number Web> photograph by Getty Images

8月31日にドルトムントへの入団発表を行なった香川真司。バイエルンを倒してのリーグ制覇に導いた「エース」をファンは待ちわびていた。

香川に「力」や「汗」を求めるのは無いものねだり。

 最終的には、後任のファンハールにも「6番か8番としての仕事」をこなす力がないと判断された。たしかに、指揮官が自ら買い入れたアンヘル・ディマリアは、前線では敵の包囲網を切り裂く「技」と、中盤では執拗に敵を追い回す「汗」が共存するワールドクラスだ。

 しかしながら、サー・アレックス・ファーガソン監督曰く、「アタッキングサードで違いを生み出す存在」として獲得したはずの香川に、攻守における「力」や「汗」を求めるのは無い物ねだりと言わざるを得ない。今回の移籍は、理不尽なマンUからの「脱出」と捉えるのが妥当だろう。

 何事にも巡り合わせというものがあるが、香川とマンUには縁がなかった。事実、プレミアでの過去2年間を「失敗」とするメディアも、具体的な原因を特定できずにいる。ファーガソンという縁結びの神はいたかに思われた。2012-2013シーズン開幕戦では、チームは惜敗したが香川自身は堂々の先発デビュー。翌節では、目ざとくスペースをつく動きとパスで存在感を高め、プレミア初ゴールも決めた。ところが、骨折という不運で前半戦の半分を棒に振る結果となった。

 それでも、戦線復帰を果たした後半戦では中盤がダイアモンド型の4-4-2システムでトップ下起用されるなど、ルーニーとの共存どころか、ルーニー相手のポジション争いでの勝利さえ不可能ではないように思われた。しかし、ファーガソンの勇退発表で全ては振り出しに。おまけに後任監督は、エバートン時代のルーニーの恩師にして、本質的に守備の意識が強いモイーズだった。

マンUのピッチは、香川の個性が生きる場所ではなかった。

 アピールの機会がなかったわけではない。だが、運はなかった。例えば、昨年9月リーグカップ第3ラウンドでのリバプール戦。ビッグクラブでは控え選手中心で挑むのが当然の早期ラウンドだが、マンUは事情が違っていた。伝統の宿敵リバプールには既にリーグ戦で敗れており、直前には地元ライバルのマンチェスター・シティに惨敗したばかりでもあった。モイーズにすれば、主力入れ替えも考慮したベンチ組起用だったに違いない。

 その試合で香川は、得意のターンで自ら創り出したシュートチャンスからミドルを狙っている。決まっていれば、勝利をほぼ確定させる意義ある追加点。しかし、シュートは無情にもバーの上部を叩き、その数分後には交代を命じられて説得力不足の72分間出場に終わった。その後のマンUは、プレッシャーが増す一方だった指揮官の焦りを反映するかの如く、攻撃がサイド突破からのクロスへと単調化。出場機会を与えられても、香川の個性が生きるピッチ上ではなくなっていた。

【次ページ】 新システム、負傷、3部に大敗と続く不運。

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