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大阪桐蔭4度の優勝にあった共通点。
「前年より弱い」という危機感が原点。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/08/25 18:55

大阪桐蔭4度の優勝にあった共通点。「前年より弱い」という危機感が原点。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

三重の反撃をなんとか抑えて4度目の優勝を手にした大阪桐蔭。安打数、エラーの数では三重に分があったが、まさに執念の勝利だった。

大阪桐蔭の3回の甲子園優勝には、共通点があった。

 危機感――。

 実はこの言葉は、大阪桐蔭が優勝する時のキーワードとなっている。というのも、西谷が監督に就任してからの過去3度の優勝は、すべて「危機感」から始まっているからだ。西谷は言う。

「これまでの3回の甲子園優勝には共通点があるんです。それは、前年度の方が強いチームだったということ。藤浪が2年生の時は、3年生の野手の方が明らかに良かったですし、'08年の優勝は1学年上が中田翔(日本ハム)の代でした。

 中田の代も、藤浪の1つ上の代も、甲子園に出ていたら優勝候補だったでしょうね。その2つのチームを甲子園にすら行かせてやれなくて、ちょっとレベルが落ちるなというチームで優勝しているんです。

 その真理はというと、悔しい負け方をして『このままじゃいけない。先輩たちがやれなかったんだから、力がない自分たちはもっとやらないといけない、覚悟をしないといけない』と、選手も僕も危機感を持ったからだと思うんです。前年のチームがちゃんとやっていなかったわけじゃないですけど、それ以上に練習しないといけないと思うようになっていったんです」

「今年のチームには'08年の伝統が生きていた」

 とかく、今年のチームは'08年のチームとよく似ていた。

 秋の時点でコールド負けを喫していたこと、春に府大会を制してから一気にチーム力を高めていったこと。圧倒的な打力で圧倒するのではなく、しっかり声を出し、全力疾走を怠らず、最後までやりきるスタイルを徹底したこと。

 野球部長の有友茂史はこう語る。

「'08年に全国制覇したチームがそうだったのですが、あの時も秋の大阪大会でコールド負けしました。当時の選手たちは『足と声で勝負します』といって、それを徹底して最後までやりきりました。今年のチームには、その伝統のようなものがあったのだと思います」

【次ページ】 プロを含む多くのOBが大阪桐蔭の財産。

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