F1ピットストップBACK NUMBER

今シーズン自己最高の2位を獲得。
アロンソだけに可能な「ある作戦」。 

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2014/08/16 10:40

今シーズン自己最高の2位を獲得。アロンソだけに可能な「ある作戦」。<Number Web> photograph by Getty Images

チームの戦略とドライバーの的確な判断、それを実行するドライビングスキルが揃い、フェラーリとアロンソは今季初めてトップ争いに参加した。

 ハンガリーGPのレースが終了してから8時間以上経過した深夜11時すぎ。いつもメディアセンターで筆者と同じく夜遅くまで仕事しているイギリス人のジャーナリストが、席を立ちこちらに歩いてきた。

 仕事を終えて、別れの挨拶でもしに来たのかと思ったら、真剣な顔でこんなことを尋ねてきた。

「ルイス(ハミルトン)がなぜ、最後のスティントをソフトではなくミディアムタイヤを履いたのか。それがわからないんだ」

 そのような疑問は、通常であればレース後の記者会見での質疑応答でクリアになるのだが、その日の記者会見では主にメルセデスAMGのチームオーダーについて質問が集中したため、ハミルトンのタイヤ戦略は盲点となっていた。だから深夜になって疑問として浮上してきたのである。そのイギリス人ジャーナリストの疑問は、以下の状況から生まれた。

 ハンガリーGPで3位に終わったハミルトンと、2位のアロンソのピットストップ戦略はともに2ストップ。しかもピットストップのタイミングもほぼ同じで、1回目はハミルトンがアロンソより1周早い8周目で、2回目はアロンソが1周早く38周目に行なっていた。つまり、ほぼ同じ戦略を採っていたと思われるのだが、最後のピットストップで履いたタイヤはアロンソがソフトで、ハミルトンはミディアムだった。

ソフトタイヤの方が速いことはフリー走行で確認済。

 今年のハンガリーGPに持ち込まれたタイヤはソフトとミディアム。ピレリの4種類のコンパウンドの中で中間に位置する2種類のタイヤだが、高速コーナーがないハンガロリンクのコースレイアウトに対しては、やや硬すぎるポジションだった。そのため、ミディアムはソフトに対して、耐久性は勝っているものの、グリップ力が足りず、1周で約2秒もラップタイムが落ちることがフリー走行の時点で確認されていた。

 さらにレースは序盤ウエット路面だったため、全車インターミディエイト(晴れ用と雨用の中間)タイヤを装着してスタートしていた。この場合、2種類あるドライタイヤを最低1回ずつ装着しなければならないというレギュレーションを遵守する義務はなくなる。

 つまり濡れた状態でスタートした後、路面が乾き出してドライタイヤに交換する場合、ドライバーは皆、自由にタイヤを選択できる権利があった。にもかかわらず、ハミルトンは最後のピットストップでソフトではなく、ミディアムを選択したのだ。

【次ページ】 31周走ってのタイヤ交換で、残りも31周。

<< BACK 1 2 3 NEXT >>
1/3ページ
関連キーワード
ルイス・ハミルトン
メルセデスAMG
フェルナンド・アロンソ
セバスチャン・ベッテル
ジャン・エリック・ベルニュ
キミ・ライコネン

ページトップ