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昨オフから始まっていた“長期計画”。
黒田博樹がピークを設定した「秋」。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2014/08/03 10:50

昨オフから始まっていた“長期計画”。黒田博樹がピークを設定した「秋」。<Number Web> photograph by Getty Images

7月30日のレンジャーズ戦では7回115球を投げ、9安打3失点と7敗目。ここまで、7勝7敗、防御率は3.98。やはり8月以降の投球がカギとなりそうだ。

防御率が悪化する9、10月にピークを!

 過去2年間を比較してみると、月別推移はまったく違った傾向にあるのだが、9、10月の防御率は黒田の主張通りいずれもシーズン最低を記録している。

「一昨年は(9、10月に)勝っていましたけど打たれていた。たまたまチームが打ってくれて、勝てた試合が続いただけです。投球自体は去年も一昨年もあまり変わってないです」

 つまり今シーズンの黒田は、シーズン終盤の9、10月でどこまで自分のパフォーマンスを維持できるかを意識しているのだ。

 それを物語るように、7月までにどこかでピークを迎えていた過去2年間とは違い、今シーズンは開幕から徐々に調子を上げてきているのが数字上からも見て取れる。

 ここまでは黒田がオフに描いてきた、青写真通りに進んでいるということなのだろう。

黒田の投球にヤンキースの命運は託された。

 だが油断は禁物だ。

“超リアリスト”として知られる黒田が何度も繰り返しているように、体調、コンディション、チーム状況等々まったく同じシーズンなどあり得ない。当然ながら、39歳になって迎えたシーズンは黒田も未体験だということだ。

 ましてやオフの調整を少し変更して臨んだわけだから、狙い通り終盤にピークを持ってこられるかどうかなど、黒田本人でさえわかるはずもない。

 前述した通り、ヤンキースのチーム状況は黒田の試みの成否を見守っている余裕などない。8月以降の黒田の投球が、そのままチームの行く末を左右しているのだ。

 もちろん、怪我で戦線を離脱した田中の穴を埋めるのは不可能だし、今後もプレーオフ争いでかなり厳しい戦いを強いられるのは必至ではある。

“Mr.ヤンキース”デレク・ジーター選手のファイナル・シーズンとして是が非でもプレーオフ進出を目指すヤンキース。

 暗澹たる空気が立ち込めるチーム内に、一筋の光をもたらすことができるか。

 8月以降の黒田の投球にチームの命運が託されている。

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黒田博樹
ニューヨーク・ヤンキース

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