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7月場所で“聖域”に挑む、白鵬の思考を分析する。
~優勝30回へ、余裕の行動心理~ 

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佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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posted2014/07/19 10:30

7月場所で“聖域”に挑む、白鵬の思考を分析する。~優勝30回へ、余裕の行動心理~<Number Web> photograph by KYODO

 むし暑い名古屋の地で、大相撲7月場所が幕を開けた。注目は、大鵬の32回、千代の富士の31回に次ぐ“優勝回数30台”に挑む白鵬だ。

 今場所前の白鵬は、それまでにない姿を見せていた。1週間にわたって報道陣に対応せず、その口を閉ざした。「大台に向けてピリピリムード?」などの報道も見受けられるなか、友綱部屋、境川部屋、九重部屋へと精力的に出稽古に出向き、自身の仕上がり具合を確認。重い口をやっと開いて、「唯一の敵は暑さかな」と笑みをのぞかせた。そして、初日3日前まで汗を流すのを恒例としていたが、今場所に限っては、4日前に早々に稽古を打ち上げた。

 その行動心理について、『白鵬のメンタル』の著者であり、労働科学研究所研究員の内藤堅志氏が分析する。

「それはきっと、調子がいいことの現れでもあったと思います。以前、横綱に『どんな場合に稽古を切り上げたり、打ち上げたりするのか』と質問した際、『それは調子のいい時。よいイメージが残るから』との答えだったんです」

いい状態でいるのに、稽古しすぎで崩れてもいけない。

 内藤氏によると、あるプロゴルファーは、練習するときに「今日は100球打つ」と決めていても、98打目に会心の球が打てれば、その時点で切り上げるのだという。最後の100打目に納得がいかないまま終えれば、それまでの99打が無駄にさえなる――アスリートならではのロジックがあるのだ。

 くわえて、「白鵬の思考は論理的かつ直感的でもある」と内藤氏は評す。白鵬は'11年の7月場所前に、熱中症に倒れた過去があり、「これも関係しているかもしれない」と考える。

「だからこそ、特に慎重でもあるのでしょう。優勝回数30台の“聖域”に挑むというある種の重圧や、身が引き締まるような、さまざまな思いを抱いているはず。もちろんナーバスにもなるでしょうし、これはストレスの要因にもなる。またストレスは、肉体的な疲労にかわります。いい状態でいるのに、これ以上に稽古して疲労し、崩れてしまわないように、今場所はあらゆる面で万全を期したのだとも言えます」

 心に脳に、さらに体に「最高のイメージ」を植え付けたまま、白鵬は聖域に踏み込んでゆく。

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