誰もが所の快勝を願っていたが……。

　誰もが所の快勝を願っていた試合だった。しかし、結果はKO負け。1ラウンドはここ数年、力を入れているボクシングでイニシアチブを握り、テイクダウンにも成功したものの、2ラウンドに右フックを直撃されてしまう。ダウンしたところにパウンドの連打を浴びてレフェリーストップ。悲劇的としかいいようのない結末だった。

　所と対戦したビクター・ヘンリーのキャリアは6勝1敗。しかし外国人、とりわけアメリカ人の戦績の少なさは“未熟”ではなく“未知の可能性”と考えたほうがいい。世界最大のMMA大国となったアメリカは、それだけ選手の層も厚い。成功の匂いを身近に感じているだけに、野心も強いはずだ。日本のトップ選手が無名の外国人に敗れる光景は、もはや珍しいものではなくなっている。

　所には、大きく、そして残酷な現実が立ちはだかったことになる。ただ、『GRANDSLAM』という大会自体が、“アメリカ基準に対して遅れをとっている日本”という現実に立ち向かうために作られたもの。このアンハッピーエンドこそがスタート地点なのだ。