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「少ない運動量」と「瞬間的な煌き」。
走らないメッシを支えるチームの献身。  

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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posted2014/06/30 11:50

「少ない運動量」と「瞬間的な煌き」。走らないメッシを支えるチームの献身。 <Number Web> photograph by Getty Images

プレッシング、ハードワークという今大会のトレンドに逆行するように、運動量ではなく一瞬の決定的な仕事でチームに勝利をもたらしているメッシ。周囲の理解は十分、念願の王座を手中に収めることはできるか。

走らないメッシ、走るネイマール。

 メッシはグループリーグ3試合で計243分間プレーしたが、各試合の走行距離と出場時間は以下の通りである。

ボスニア・ヘルツェゴビナ戦:8618m
イラン戦:7772m
ナイジェリア戦:5921m(63分交代)

 比較のために得点ランクで首位タイだったネイマールとミュラー、そしてオランダのカウンターの仕留め役・ロッベンの走行距離を記す。

<ネイマール>
第1試合:9538m(89分交代)
第2試合:9400m(フル出場)
第3試合:8325m(72分交代)

<ミュラー>
第1試合:10615m(83分交代)
第2試合:12224m(フル出場)
第3試合:11062m(フル出場)

<ロッベン>
第1試合:10283m(フル出場)
第2試合:10835m(フル出場)
第3試合:10237m(フル出場)

 フル出場と途中交代の違いはあれど、平均で10000mを超えるミュラーとロッベンはもちろん、比較的守備の負担が軽減されているネイマールと比べても、メッシは“走っていない”のだ。

 攻守転換の素早さでポゼッションや個の力を封じ込めたチリやメキシコのように、今大会はハードワークが幅を利かせている。それはドイツのミュラー、オランダのロッベンのように、強豪国のキーマンであっても例外ではない。

 だがメッシの走行距離は、その傾向に明らかに逆行している。

【次ページ】 温存が、スーパーゴールを生み出している。

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