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32試合で94点、今大会は“面白い”!
W杯のトレンドを決めた3つの文脈。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2014/06/24 16:30

32試合で94点、今大会は“面白い”!W杯のトレンドを決めた3つの文脈。<Number Web> photograph by Getty Images

ブラジルのトップ下で、オスカルほど守備に奔走する選手はこれまでいなかった。攻撃を牽引すると同時に、守備でも大きな役割を果たすオスカルは、ブラジルにとってネイマールと同じか、もしかするとそれ以上に重要な選手である。

今大会、「ブレ球」の威力は高くない。

 最後は、独断と偏見に基づく予想をいくつか加えたいと思う。

 おそらく今大会は、ブレ球の無回転シュートがクローズアップされる大会にはならないのではないか。公式球の「ブラズーカ」は6枚のパネルから構成されているが、パネルの枚数(つまりは、つなぎ目の数)が少なくなったことで空気抵抗が減り、「ボールの不安定な挙動」が減ったという報告が各方面からなされている。

「ボールの不安定な挙動」なるものが、「ブレ球」の秘密であることは指摘するまでもない。ポルトガルが奇跡的にグループリーグを突破できたとしても、ロナウドの試練は続くだろう。

 敷衍して述べれば、このようなブラズーカの特性は、シュートパターンにも影響を及ぼす可能性がある。ボールの直進性が高まれば、当然、シュートのスピードと威力は増してくる。GKがファンブルするのを見越した上で強烈なシュートを放ち、セカンドボール狙いでゴール前に詰めていくチームが増えてきてもおかしくはない。

 ゴール前でのアクションでは、DFに詰め寄られたアタッカーが自ら重心を後ろに落とし、尻餅をつくような形で放つシュートが散見されるのが興味深い。一時期日本で流行ったナンバ走りの方法論を連想させる体のさばき方だが、理には適っている。要はシュートを打つスペースがなければ、わざと腰砕けになって「スペースを作り出せばいい」のである。

コロンビア戦で、日本も「流れ」に乗ってほしい。

 大会はまだ半分を終えたに過ぎない。試合を経るごとに選手の疲労は蓄積するし、一発勝負の決勝トーナメントでは、より慎重なアプローチをするチームが増えてくることも考えられる。

 とは言え過去の大会において、決勝トーナメントにおける大一番とされたような好勝負が、すでにグループリーグで何試合も繰り広げられているのも紛れもない事実だ。

 オーストラリアやイランは、オランダやアルゼンチンを相手に熱く、緊迫感のある試合を演じてみせた。僕が今切に願うのは、日本代表がコロンビア戦においてブラジル大会の流れに乗ることと、しかるべき結果を収めて決勝トーナメントに勝ち進むことである。自分たちが掲げてきた攻撃サッカーの可能性と真価を見極める上で、こんなにいい機会はめったにないのだから。

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