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“強すぎた王者”に手放しの賞賛を。
スペイン、黄金の6年間の完全な終焉。 

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細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byGetty Images

posted2014/06/20 16:30

“強すぎた王者”に手放しの賞賛を。スペイン、黄金の6年間の完全な終焉。<Number Web> photograph by Getty Images

オランダ、チリに連敗しグループリーグ敗退が決まったスペイン代表。パスはつながっていたが、危険なエリアにするすると侵入していくスペインらしい攻撃はついに見られなかった。

足りなかったのは「勝利への飢え」か。

 指揮官は言う。

「インテンシティのある勇敢なプレーだった。だからこそ勝てた」

 よくフィジカル的、戦術的な「強度」と訳されるインテンシティとは、おそらく「メリハリ」という言葉のニュアンスが近いのではないかと思う。行くべき時に行く。走るべき時に走る。体を当てるべき時に当てる。その判断と「強度」が明確に浸透していたからこそ、チリはスペインのお株を奪う組織的な攻撃サッカーを貫くことができた。

 チリ戦の後、スペインを率いるビセンテ・デルボスケは言った。

「気持ちは入っていた。しかし何かが足りなかった」

 その「何か」を意味する最もシンプルな答えは、広義の「飢え」ではないかと思う。

 シャビ・アロンソは言った。

「勝利への飢えを維持できなかった」

 フェルナンド・トーレスも同調する。

「勝つことに疲れていた」

バルセロナの陰りとともに、スペインも勢いを失った。

 ユーロ2008を制して以来、それまで喉から手が出るほど欲していた国際タイトルを手にしたスペインは、それまでの鬱憤を晴らすように、どれだけ勝ち続けても「勝利への飢え」を失わなかった。それが「勝者のメンタリティー」を6年間も維持し続けられた唯一の理由であることは間違いない。

 そしてそれは、このチームの主軸を担うバルセロナの選手たちが幼少期から植え付けられてきたメンタリティーでもある。美しく勝ち続けることの意味、というより価値を証明することに、彼らは全勢力を注いできた。

 しかし2012年、稀代のモチベーターとしてバルセロナを先導してきた指揮官ジョゼップ・グアルディオラがチームを去ると、その勢いに陰りが見え始めた。事実、それまでと同じようには勝てなくなったバルセロナの姿を見て、「黄金時代の終焉」がささやかれたのも無理はない。もちろんそうしたムードは、スペイン代表にも波及する。

【次ページ】 しかし彼らの6年間は、手放しで称えられるべきものだ。

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