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「目指せ限界突破!来年のダービーへ向けた新しい物語がスタート」 

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posted2014/06/19 12:40

「目指せ限界突破!来年のダービーへ向けた新しい物語がスタート」<Number Web>

新馬戦を迎える馬の関係者は、誰もがこれから始まる物語がどんな可能性を持って広がっていくのか、大きな期待を抱いている。この馬にとっても同じ。
しかしその日は朝から雨。初めてのレースは良馬場でやらせてあげたいとこれも誰もが思うことだが、生憎の不良馬場でのレースとなった。

父サクラバクシンオー、母マザーウェル。
そう言えばこの馬については1歳の秋に管理予定の尾関調教師に話を伺っていた。「バクシンオーそのもの。短距離ですね」祖母はマイルG1を制したシンコウラブリイ。「母もスピードある血統。そう、みなさんがイメージするそのままですよ」とにこやかに語っていた。

昨年からダービーの次の週には早くも新馬戦が始まり、昨年1週目からデビューしたイスラボニータが皐月賞を制し、ダービーを2着。レッドリヴェールが阪神JFを勝ち、桜花賞を2着と注目度もさらにUPした。
そんな今年最初の新馬戦、1番人気に支持されたのはこのリミットブレイク。血統もさることながら、直前の調教でも古馬を相手にいい動きを見せていたからだろう。
ところが実際は出遅れて後方から。直線も一旦は勝つか⁉︎と思わせたが、かわされて結果4着に終わった。

「お願い!みんな落ち込んでませんように」
勝てると思っていた期待が、今は4着という現実に変わっている。私はドキドキしながらレースから引き上げてくる馬を待った。 が、そんな私の不安は危惧に終わることに。騎乗した北村宏騎手はちょっと興奮気味に「ゲートだけ。あとは何も言うことがない!」と悲観する表情などどこにもない。気がついたらその周囲には「次へ」という新しい意識が生まれているようだった。

その3日後、私は美浦の厩舎を訪れた。あの馬場で激走した疲れが出ているんじゃないか?走ることが嫌になってたらどうしよう?心配性の私はついつい悪い方へ考えがちだが、いつもその答えは明るく前向きだ。「あの馬場だったし、自分もちょっと心配したんですが、馬は特に変わりないですよ」と竹内調教厩務員。改めてレースを振り返ってもらうと、「ゲートでうしろに重心がかかっちゃったみたいで、それで出遅れたみたいです。でも直線は勝つかなーって期待しちゃいました。出遅れた分、途中で脚を使っちゃったんでしょうね。でもなんにも悲観してません。むしろこれからが楽しみなんです」1番側で接している人の言葉は心強い。また私の不安はどこかへいってしまった。
リミットブレイクは普段とてもおとなしく、全く手がかからないそうだ。気持ちもどっしりとしていて、環境が変わっても動じない。でも馬場に入るとピリッとする。「ON.OFFの切り替えも上手ですね。動きにも無駄がないし、走り出せば自由自在。素直だし余計なこともしない」と褒め言葉がどんどん続く。「なんか優等生過ぎちゃいますね」と笑った。

「1歳の秋にもお話しましたよね。たぶんバクシンオーそのものって言った気がします。でもあれから成長する過程で馬体にのびが出て、距離が持ちそうだなって変わってきました」と語るのは尾関調教師。「新馬戦も最後伸びきれなかったのは、距離(1400m)ではなく馬場でしょうね。良馬場だったらとはちょっと思うけど、あの馬場を経験できたのも次に生かせると思ってます」とやはり前向きだ。
「父も祖母も本格化したのはずっと後になってのこと。この馬は現時点での完成度も高いけど、伸びしろもまだまだある。成長が楽しみなんです」

当面の目標は「まず1勝」。そのために少し休養させて、福島か新潟を予定している。
竹内調教厩務員は「本当にいい馬なんです。今年の目標ですか?暮れのG1です」と目を輝かせた。そして尾関調教師は「イメージはグランプリボスです。2歳でマイルG1を勝って、つい先日もジャスタウェイに迫る2着。あんな風に息長く活躍してほしいですね」と。そのにこやかな表情に不安など見あたらない。私の後ろ向きな考えが恥ずかしくなるほどだった。

結果は出せなかったデビュー戦。しかしこの馬を取り囲む人々の期待は決して萎むことなく、さらに大きく強固なものとなった印象だ。次こそ堂々と先頭でゴールしてもらおう。そして「限界を突破する」という馬名同様に、想像をはるかに超える活躍を期待するのだ。

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プロフィール
目黒貴子(めぐろあつこ)
TV東京「土曜競馬中継」のパドック、勝利ジョッキーインタビューを担当したのち、
関東UHF系「中央競馬ワイド中継」にて検量室前リポーター、キャスターとして活躍。
現在は競馬に関するイベントの司会や原稿の執筆など。18年以上競馬に仕事として携わっている。

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