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「日本スタイル」は攻撃だけじゃない。
4年前の“勝利への執念”を思い出せ。 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byGetty Images

posted2014/06/14 13:45

「日本スタイル」は攻撃だけじゃない。4年前の“勝利への執念”を思い出せ。<Number Web> photograph by Getty Images

4年前の南アフリカW杯初戦、本田圭佑のゴールでカメルーンに勝利した日本。低かった前評判を覆し、決勝トーナメントに進出する快進撃はこの時から始まった。

あの背水の90分が、今につながっている。

 長谷部の言葉通り、日本は過去4度のW杯を戦ってきたが、チームのスタイルに一貫性はなかったのかもしれない。しかし、5度目の大会でやっと“日本らしさ”を世界の舞台で表現することの重要性を選手自らが口にしている。2014年6月14日(現地時間)のコートジボワール戦は、20年近い積み重ねを経てたどり着いた日本サッカーのスタート地点にする。そんな決意が現代表チームから感じられる。

 しかし、同時に思うのだ。

 勝つために自らのスタイルを捨て、勝利にこだわり続けたブルームフォンテーンでの90分間があったからこそ、今があるということを。大半の時間を守備に費やし、何度も何度もピンチを跳ね返し続けた。高い集中力と厳しい球際。耐えに耐え、粘り強く戦った90分間。プレイの楽しさよりも、勝利という結果を選択し、チームが一丸となり守りぬいたゴール。

 ピッチに立った者、ピッチから去らねばならなかった者、日本代表のあらゆる選手たちの執念がもたらしたカメルーン戦での勝利こそが、ザックジャパンの原点なのだと。

「このチームはチームとしてうまく戦わなきゃ攻守において勝てない。4年前もそうだったけれど、初戦は固い試合になる。全員でハードワークしないと。集中力や一瞬のすきで試合が変わるから。そういう雰囲気を持って、緊張感ある試合ができればと思う。勝って日本を世界に知ってもらいたい。日本のサッカーはまったく世界には知られてないから」

 4年前、サポートメンバーとしてチームに帯同していた香川真司が初戦を前に生き生きと語っている。彼もまた南アフリカでの激闘を経験した一員なのだ。

思い出して欲しい。日本のもう一つの大きな武器を。

 W杯における初戦の重要性を改めて語る必要もない。

 勝利を手にしているとはいえ、先制点を許す試合が続いている現状、最も重要なのは試合への入り方になるだろう。

 だから思い出してほしい。だから忘れないでほしい。

 自らの武器を捨て、背水の陣のような心境でピッチへと向かった4年前のことを。90分間、一瞬の気の緩みも許されない状況で戦うあの姿もまた、日本代表の大きな武器だということを。

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