対照的な「フィル＆ヒデキ」は注目に値する。

　そんなミケルソンが、今、一番見習うべき相手は「オンリー・松山」かもしれない。2週前に初優勝を挙げ、それこそ幼いころからの夢を叶えてドリーム・カムズ・トゥルーの想いのはずの松山だが、「終わったことなので。切り替えて頑張っていこうかな」と、すでに表情はいつも通りに戻っている。調子は「良くも悪くもない」と、気負いは皆無に見える。

　ミケルソンが入念にチェックしたラフの代わりの砂地も「別にそこに行かなかったらいい話なので気にしない」と取り合わない。

　他選手たちは、せり上がった固く速いグリーンの周囲からの小技がカギになると口々に囁く中で、松山は「自分のスイングが良かったら真っ直ぐ飛ぶし、グリーンにも止まる。アプローチも同じこと。普通通りに練習ラウンドして、普通に今まで通りやればいい」。

　全米オープンという特別な舞台に立とうとしているのに、ミケルソンからは「特別」の二文字がスペシャル・オーラとなって漂い、松山からは「スペシャル」の「ス」の字も出てこない。

　松山もミケルソンも「気負いは禁物」であることを知っているという点では同じなのだ。だが、ミケルソンは「あえて気負わない」よう努め、松山は「いつも通り」気負わない。気負わないようにしようとさえ思わない。

　米メディアは相変わらず、注目は「オンリー・フィル」だと強調している。けれど、日本人の私は、そんな対照的な「フィル＆ヒデキ」の2人が注目だと強調したい。