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アンチェロッティ、3度目のCL優勝へ。
彼が現役最高の監督と言える理由。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2014/05/23 12:30

アンチェロッティ、3度目のCL優勝へ。彼が現役最高の監督と言える理由。<Number Web> photograph by AFLO

過去に所属したクラブで選手とトラブルを起こしたことがほとんどなく、現在もレアルで選手たちに慕われているアンチェロッティ。

現役最高の監督、カルロ・アンチェロッティ。

 このペイズリーのことを考えるたびに必ず思い出すのが、現レアル・マドリー監督のカルロ・アンチェロッティだ。

 1995年にレッジーナにおいて指導者として歩みだしたアンチェロッティは、以降、パルマ、ユベントスといったクラブを渡り歩いていく。

 ユベントス時代はインタートトカップを制したのみだが、ミラン時代には'02-'03、'04-'05、'06-'07シーズンにCL決勝に進出。'02-'03シーズンと、'06-'07シーズンには見事に優勝を収めた。

 アンチェロッティは、その後も着実にトロフィーの数を増やしていく。チェルシー監督時代の'09-'10シーズンには、クラブ史上初となる二冠(プレミアとFAカップ)を達成し、PSGを率いた'12-'13シーズンには、リーグ1のタイトルを19年ぶりにもたらした。

 そして今シーズンから指揮を執るようになったレアルでは、CLの決勝にまで駒を進めている。

 結果、2度のCL優勝に加えて、準優勝以上の成績もすでに2回確保したアンチェロッティは、ファーガソンと同じ2位以上の順位に格上げされることが決定している。そればかりか、明日のCL決勝で勝てば優勝3回、2位1回となり、ペイズリーをも抜いて単独トップに立つ形になる。これは選手時代と監督時代、両方でCL優勝を経験した華やかなキャリアに、さらに箔をつける。

「使い勝手のいい監督」というイメージ。

 にもかかわらず、世間一般のサッカーファンが「名将」を論じる時に、彼の名前を真っ先にあげるケースは多くない。最近流行のサッカー関連書籍でも、まず取り上げられるのはいわゆる「戦術家」の類いである。

 ただし、これはクラブの経営陣も同様だ。ヨーロッパのサッカー界では、ビッグクラブを主戦場に、数年おきに監督の玉突き人事が起きる。昨年の夏に起きたシャッフル(総入れ替え)などは、その最大規模のものだった。

 だがアンチェロッティが、震源地になったことはない。むしろ彼が演じてきたのは、たまたま空いたポストをうまく埋める役回りだった。

 これはアンチェロッティが醸し出すイメージに負うところが大きい。彼は戦術家というよりも「使い勝手のいい監督」――そこそこ名前が通っていて、ある程度の成績が計算でき、しかもチームに波風を立てない監督と見なされてきた。しかもアンチェロッティ自身、「都合のいい男」扱いされても、腹をたてるふうでもなかった。

【次ページ】 革命家ではなく「郷に入れば郷に従え」。

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