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内村航平に次ぐ“オールラウンダー”。
野々村笙吾、初の体操世界選手権へ。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2014/05/25 10:30

内村航平に次ぐ“オールラウンダー”。野々村笙吾、初の体操世界選手権へ。<Number Web> photograph by AFLO

昨年の日本選手権で内村が名前を挙げた時はまだ無名の存在だった野々村笙吾。世界一のオールラウンダーという壁と、期待。野々村は内村を追いかける。

世界最高のオールラウンダー、内村という壁。

 野々村は、市立船橋高校時代から注目を集めてきた存在だ。全日本ジュニア選手権を制したのをはじめ、アジアジュニアのタイトルも手にし、2011年にはワールドカップドイツ大会で、海外の強豪選手を抑え優勝。大学に進学したあとは怪我にも悩まされたが、期待を集める存在に変わりはなかった。

 内村も、加藤とともに「次の世代を引っ張っていくと思います」と名前をあげたことがあるし、昨年の加藤との拮抗した戦いぶりを見ても、十分、世界でもトップクラスの1人であると言ってよい位置にいる。

 それほど高い能力を持ち、成績も残してきたが、今まで世界選手権に出場したことがない。わずかに'11年の大会の補欠になったばかりだ。

 そこには、野々村のスタイルがかかわっている。野々村が、典型的なオールラウンダーであることだ。つまり、得意とするつり輪をはじめあらゆる種目でレベルが高い一方で、抜きん出た特定の種目があるわけではないということだ。

 単純に個人総合の上位から選ぶなら、野々村はすでに世界選手権に出場していただろう。 しかし、打倒中国を目指す日本は、選考基準にあるように、近年、特定の種目に強いスペシャリストにも目配りする選考を行なってきた。

 そして日本には、世界ナンバー1のオールラウンダーである内村がいて、内村に次ぐ存在の加藤がいる。世界の大舞台へ立つためには、大きな壁が立ちはだかっている。だからNHK杯を終えて3位になりながら、昨年も世界選手権には出られなかった。

初めての世界選手権へ、NHK杯に臨む。

 だが今年は、昨年より1名、個人総合で選ばれる人数が増えた。これは、野々村にとっては大きなチャンスである。

 全日本選手権後、野々村は落ち着きとどこかほっとした感じとを漂わせ、こう語っている。

「2日間でミスが1つでこの順位だったので、全体的にはよかったと思います」

 もちろん、大きなミスがあれば得点も大きく下がるだけに、NHK杯で油断するわけにはいかない。それは野々村自身、承知しているはずだ。

 初めての世界選手権で力を見せつけるために。その日へ向けて、野々村はNHK杯に挑む。そして野々村の一層の飛躍は、日本体操男子のレベルをさらに引き上げることにもなる。

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