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類まれな人格者だった指揮官ビラノバの死を悼む。
~バルサ前監督へのリスペクト~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2014/05/17 06:00

類まれな人格者だった指揮官ビラノバの死を悼む。~バルサ前監督へのリスペクト~<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

 前バルセロナ監督ティト・ビラノバの死はサッカー界に衝撃をもたらした。試合前に涙を流すブスケッツの姿は世界で流され、多くのスタジアムでその死を悼んで黙祷が捧げられている。

 ビラノバは現代サッカーでは珍しい人格者だった。争いごとを嫌い、主審に激しく抗議することも、記者会見で挑発する記者に言葉を荒げることもなかった。選手の誰かは監督と揉めるものだが、ビラノバの場合は不仲さえ噂されなかった。目立ちたがらず、地元紙『スポルト』に自身を賞賛する記事が載った際には、編集長に電話し「私のことはいいから、他のことを褒めてくれ」と言ったこともある。

 筆者は過去に3度インタビューさせてもらったことがあるが、今も記憶に残っているのはそんな温厚な人柄だ。彼を愛したファンの間では『新カンプノウにティトの名を』との声も出ている。

関係の良くないエスパニョールも追悼の意を示した。

 意外なクラブも迅速な対応を見せた。同じ町で犬猿の仲にあるエスパニョールだ。練習前に1分間の黙祷を捧げ、告別式には会長や幹部をはじめ、選手にアギーレ監督も帯同させた。バルサ側に何か協力できることはないかと提案するなど、当初からサポートを買って出ている。そんな姿勢にバルサのカルラス・ビラルビ副会長は「誠意ある行動を見せてくれたエスパニョールにクラブとして感謝している」と公の場で謝意を示している。

 この2クラブはライバル関係にあるだけでなく、ユース選手の引き抜きを巡って何件も裁判を起こすなど、ピッチ内外で関係は悪い。しかし彼らには一切の不仲を忘れるべき理由があった。それが、5年前に急死したエスパニョールのダニエル・ハルケの一件だ。当時、エスパニョールは各方面からサポートの申し出を受けるなど、サッカー界に支えられた経験があった。ジョアン・コジェ会長は言う。

「我々も、大事な人を失うことの辛さを身にしみて分かっている。今だけは、エスパニョールとバルサの間にライバル関係は存在しない」

 告別式の日、カンプノウはファンが持ち寄ったたくさんの花束とバルサのユニフォームで飾られた。その中に、青のエスパニョールのユニフォームも、白のレアル・マドリーのユニフォームもあった。平穏とリスペクトを愛したビラノバはその光景を見て、きっと喜んだことだろう。

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