日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER

今野泰幸は“背負い込む”タイプ。
責任感が壁になる、という試練。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/05/01 10:40

今野泰幸は“背負い込む”タイプ。責任感が壁になる、という試練。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

日本代表78キャップは歴代9位タイ。前へのチェックと高い機動力でザッケローニからの信頼も厚く、ブラジルW杯のキーマンのひとりであることは間違いない。

長谷川監督も心配する「元気のなさ」。

 見ている者には伝わりづらい感覚の微妙な狂い。それが苦悩の根源にあるようだった。感覚が狂っている要因は一体、何だというのか? 次の質問を分かっていたかのように、彼はさらに言葉を続けた。

「要因はいろんなものがあると思うんです。メンタルというか、絶対に負けない自信というか……。そういうのもうまくかみ合っていかないから、自信なさげにプレーしてしまっているのかもしれません」

 迷いが新たな迷いを生み、負の連鎖に陥っているような感じと言えばいいだろうか。だがあの場面、彼のせいで失点したわけでもない。チームを勝利に導く決勝ゴールを挙げても、それで良しとはしない。これには長谷川健太監督も「元気がないなという話は(本人に)しましたよ」と心配顔を崩さなかった。

「このままじゃ(23人)のメンバーもダメじゃないかって」

 チーム事情により、今季は主にボランチで出場している。元々のポジションであり、そこが「感覚のズレ」の元凶であるとも思えない。やはり、目前に控えるブラジルW杯が何か影響を与えているのかもしれない。ザックジャパンの主力として、クラブでもふさわしい活躍をしなきゃいけないという「力み」みたいなものがあるように思えた。

 今野は言う。

「(W杯が近づいてきて)確かにナイーブになっている部分は自分自身、あるかもしれません。代表選手というものはチームで活躍して、チームを上位に引き上げる選手が選ばれると思っていますから。今の僕はガンバに貢献できていないし、上位に引き上げるような力も出せていない。このままじゃ(23人の)メンバーもダメじゃないかって、そんなことも頭をよぎりますよ」

 今野の一連の言葉は、サッカーに対して実に真摯な彼らしいと思えた。主力のセンターバックとしてW杯に向かう以上、相応のプレッシャーを己に課しているようにも感じられた。

【次ページ】 リーグでのチームの順位とW杯での活躍は比例しない。

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