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大いなる流れの中で。
~26人の『サーフ・レジェンド』~ 

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

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photograph byRyo Suzuki

posted2014/05/06 10:30

大いなる流れの中で。~26人の『サーフ・レジェンド』~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki

『サーフ・レジェンド・ストーリーズ』山森恵子著 エイ出版社 1500円+税

 サーフ・レジェンドと言われれば、一人二人は思い出せるし有名なサーフィン映画だって昔みた。けれど、今更ながら波乗りには向かえないなあ、というあなたがページを開いても実に読み応えのあるサーファーたちの評伝である。

 著者の山森恵子が、雑誌『NALU』で伝説的なサーファーについての連載を始めたのは19年も前のことだ。そこからこつこつと書きためた原稿をまとめた『サーフ・レジェンド・ストーリーズ』は、波に向かう26人が決して独りでなかったことを証明する。そう、どんなに孤高だと思われていたサーファーも、誰かの影響を受け、誰かの想いを継ぎながら海に出ていたのだ。

波乗りたちの運命は絡み合って、大海原へと繋がる。

 近代サーフィンの祖と呼ばれるデューク・カハナモクにママラ湾とワイキキを託されたジョージ・ダウニング。ある雑誌に載っていた波乗りをするミッキー・ドラの写真を見て、自身もサーフィンにのめり込んでいった大野薫。一方、破天荒な生き方で周囲を翻弄し続けたマリブのカリスマ、ミッキー・ドラは、ボブ・シモンズがサーフ事故で亡くなった'54年に星のマークを付けていた。

 そして、現代のサーファーたちは、波の上の数学者といわれたボブ・シモンズの提唱した「ハイドロダイナミカ」を近未来のサーフボードの形だと認め始めた。

 個々の物語は小さいが、波乗りたちの運命は確実に絡み合い、そして最後は大海原へと還る。そうか、全てはそこから享受したものだからだ。ジョージ・ダウニングの書いた寓話のように美しい序文の意味を、読後にもういちど噛みしめる。

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