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長谷川穂積、渾身の打撃戦で散る。
世界15戦目で見せ付けた“集大成”。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2014/04/24 11:45

長谷川穂積、渾身の打撃戦で散る。世界15戦目で見せ付けた“集大成”。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

ロープを背負い、真っ向の打ち合いを受けてたった長谷川穂積。7回でTKO負けを喫したが、長谷川のボクシングの集大成といえる試合を見せてくれたのではないだろうか。

距離のキープが勝利の条件と考えるのがセオリーだった。

 試合後、勝者のマルチネスは「近距離の戦いになれば私のパワーが勝ると思っていた」と振り返った。チャンピオンが言うまでもなく、身長とスピードで勝る長谷川が勝利するためには、距離のキープは絶対条件と考えるのがセオリーだ。マルチネスにさんざんプレッシャーをかけられ、さばき切れなくなった終盤ならまだしも、序盤にこのような事態になってしまうとは……。

 試合後、コメントを残さず病院へ向かった長谷川に代わり、山下会長が記者の質問に答えた。

「序盤は距離をとりながらボディ打ってポイントを稼いでいく作戦やったけど、2ラウンド目に足止めてロープに詰まったら……あのダウンがすべてやったかもしれないですね。

 本人が打ち合いたい性格やからね。あそこは外す練習をずっとしてたんやけど。やっぱり相手のパンチも強かったから、外せなかったのか、どうだったのか、応戦しなきゃいけなかったのか。面と向かってパンチ交えたもんじゃないとわからないのかなと思いますね」

長谷川はなぜ序盤に打ち合いを挑んだのか。

 試合はその後、長谷川が盛り返す場面もあり、6回までのポイントではジャッジ2人がドロー、1人が長谷川の2ポイント優勢につけた。だが、それはあくまでポイント上の話にすぎない。ダメージを蓄積した長谷川は7回、すべてを出し尽くしたようにキャンバスに転がった。山下会長が答えたように、やはり2回のダウンがすべてだったのではないだろうか。

 はたして長谷川はなぜ序盤に打ち合いを挑んだのか、あるいは受けて立たざるを得なかったのかは、本人にしかわからない話である。ただ、長谷川が「集大成」と位置づけたこの日のボクシングは、長谷川の拳歴とこれまでの発言を振り返ると、必然だったようにも思える。

【次ページ】 世界王者になるまで、長谷川のKOはわずか5つだった。

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