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<伝説的ランナーの食生活とは> ベジタリアン・アスリートの素顔。 ~スコット・ジュレク&デイヴ・スコットに聞く~ 

text by

飯塚真紀子

飯塚真紀子Makiko Iizuka

PROFILE

photograph byRyuichi Oshimoto

posted2014/04/15 10:00

<伝説的ランナーの食生活とは> ベジタリアン・アスリートの素顔。 ~スコット・ジュレク&デイヴ・スコットに聞く~<Number Web> photograph by Ryuichi Oshimoto

菜食主義になることで、新しく発見する食材が出てくる。

「すぐに肉を絶ちましたが、最初は魚は食べていました。次に魚を絶ち、そして、卵を止め、最後に、ミルクやチーズなどの乳製品も止めたのです。牛乳は大好きだったので止めるのは大変でした」

 そんなスコットにとって、完全菜食主義者になることは大きな挑戦だった。しかし、考え方を変えることで、彼はその挑戦を成功させることができた。

「菜食主義者になったら、あれもこれも食べられなくなると考えてしまう人が多いかもしれません。しかし、そんなことは全然ないんです。菜食主義になることで、新しく発見する食材もどんどん出てくるんです。エキサイティングでしょう? 未知の食べ物は好奇心をそそられるし、料理するのも楽しいじゃないですか。何より、そんな食べ物は身体にいいんです。ポジティブに考えながら、徐々に、ヴィーガンになっていったんです」

 そんな考え方の下、新たな食材を取り入れて行く食事法を、スコットは“包含食事法”と呼んでいる。食べられる物を除外していく“除外食事法”とは相反するものだ。

 スコットのキッチンには、玄米、豆腐、テンペ(テンペ菌で大豆を発酵させて作るインドネシアの伝統的食品)、味噌など、それまで食べたことがなかったエスニックな食材が並び始めた。1年半をかけ、スコットがヴィーガンになったのは24歳の時だった。

 そして、彼の身体は様々な変化を始める。

40歳の今も現役で走れているのは菜食のおかげ。

「ヴィーガンになって最初に気づいたのは、余分な脂肪が取れて引き締まったことです。肌も艶が良くなり若返ったし、走った後の疲労回復時間も短くなりました。アスリートのスポーツ寿命は5~10年ですが、40歳の僕が、今も現役で走ることができているのは菜食のおかげだと思います。負傷しても、筋肉に炎症が起きにくくなったし、関節痛も少なくなりました。菜食により、必須脂肪酸をバランスよく摂取することで、身体がより抗酸化するからでしょう。最近測定したコレステロール値は110ほど。年齢のわりには善玉コレステロール値が非常に高く、悪玉コレステロール値が低かったのです」

 しかし、スコットのようなウルトラマラソンランナーにとっては、持久力を維持するため、多くのエネルギーが必要になるのではないか。筋力を得るために、肉や乳製品からたんぱく質を摂っているランナーは多いはずだ。

 果たして、菜食で十分な量が確保できるのか? スコットはそんな疑問に、自信を持って“イエス”と答える。

【次ページ】 “1000キロカロリーのスムージー”でカロリー摂取。

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