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坪井智哉、米独立リーグで現役続行!
迷える盟友にイチローがかけた言葉。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2014/04/14 11:50

坪井智哉、米独立リーグで現役続行!迷える盟友にイチローがかけた言葉。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

坪井智哉・公式フェイスブックより。「独立リーグの中では最高峰と言われており、メジャーやマイナーとの入れ替えが頻繁に行われているリーグ。少しでも夢に近づく為、このリーグでプレーすることを2年前から望んでいました」と夢へと一歩前進したことが報告されている。

安月給、ハンバーガーにホットドッグ、長距離移動……。

 最終的に、以前から面識のあったスポーツ・アドバイザーのケニー野村氏の助力により最悪の事態を回避することはできた。ただ、「いきなりアメリカで過酷な現実を見せられましたからね。そりゃあ、人間不信にもなりますよ」と、坪井は今でも苦虫を噛み潰すような表情を見せる。

 チームと契約できたからといって、安穏と構えていられないのもアメリカ野球の底辺だ。

 まず、給料がとにかく安い。坪井は「サラリーマンの平均月給と1カ月フルにアルバイトをした給料の間くらいですかね」と額面こそ明かさなかったが、これだけでも収入面の厳しさが伝わる。現に今も、蓄えを切り崩しながら生活しているそうだ。

 環境面だって恵まれているとは言えない。

 食事はハンバーガーとホットドッグ、ブリトーのローテーション。その他の選択肢となると自炊くらいだ。金銭面で潤っているわけではないから外食など滅多にない。

 その他、ユニフォームの洗濯はチームスタッフがしてくれるというが、基本的に道具の管理は自分でしなくてはならないし、遠征先への移動にしても狭いマイクロバスで8時間なんてざらだ。これには坪井も、「しんどくはないけど、だるいですね」と苦笑いを浮かべる。

「アメリカで野球をしている時点で失敗ではない」

 そして何より、選手にとって過酷なのが生存競争だ。

 メジャーリーグを頂点としたアメリカ野球の裾野はすさまじく広い。3A、2A、1Aといったメジャー傘下以外に、坪井が所属するような独立リーグはアメリカ全土に広がっている。ドラフトで指名されない選手の多くがここからキャリアをスタートさせるのだが、チームとしても余剰戦力を抱えるほど資金に余裕はない。

 つまり、結果が出なかったり怪我をしようものならばすぐにリリースされる、ということだ。実際、契約書にそのような項目が記載されているケースが多い。

 当時38歳の坪井にとって不利過ぎるスタート。それでも本人は、「ネガティブになることはなかったですね」とかぶりを振る。

「『アメリカの野球ってどんな感じなんだろう?』って期待感のほうが強かったですから。プレーヤーとして『俺を出したら打つで!』とか変な自信もなかったし。結果が出なかろうが怪我をしようが、アメリカで野球をしている時点で失敗ではないと思っているんで」

【次ページ】 3週間足らずでリリースされて「浪人生活」も経験。

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