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韓国の15歳の入団でバルサに重罰!
補強禁止騒動、それぞれの思惑とは。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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posted2014/04/10 10:30

韓国の15歳の入団でバルサに重罰!補強禁止騒動、それぞれの思惑とは。<Number Web> photograph by Getty Images

バルセロナが誇るカンテラの最高傑作は、いわずと知れたメッシ。小さい頃からバルサの哲学を身に着けたからこそ今の活躍があるとも言えるはずだが……。

もとより、バルサは確信犯だった。

 ところが、同時にバルトメウは「バルサは何も悪いことはしていない」と開き直った。前述の“例外”には学校教育や快適な生活環境の保証といった条件が付けられているが、バルサのカンテラはこれを完全に満たしており「選手としても人としても素晴らしい育成を行なってきた世界的モデル」だからというのがその根拠だ。ルセイ前会長は彼らを第19条の適用外とするようFIFAに求めていたというから、もとよりバルサは確信犯なのだろう。

 一方で、わずかながら、今回のFIFAの決定に対して「間違っている」という声も上がっている。

 かのボスマン判決に関わったベルギーの弁護士ジャン・ルイ・デュポンが問題視するのは、あらゆるケースを一律に取り締まるFIFAの姿勢だ。

「何より重視しなければならないのは子供とその家族の意志なのに、自動的に全てを禁ずるこのやり方では、生活を向上させるチャンスを逃してしまう家族が出てくる。たとえば戦争状態にある国から14歳の少年とその家族がバルセロナに転居し、それまで縁がなかった教育を受け、ソーシャルサービスを享受する可能性をFIFAは潰してしまっている」

「FIFAの処分は結局のところ、子供たちを罰している」

 本人の意志を問うならば、バルサレベルのクラブに入る夢を叶えた少年がFIFAのやり方に納得するわけがない。

 最初に資格停止されたイ・スンウの場合、18歳になったら再入団させるから韓国に戻って試合に出続けるようバルサに説得されたが、拒んだ。韓国サッカー協会の関係者には、バルサを離れ、国へ帰るぐらいならサッカーをやめると答えたという。

 イに続いて公式戦出場の道を断たれたフランス人テオ・チェンドリの母は、スペインの新聞でFIFAに対する不満をぶちまけている。

「ケース・バイ・ケースで対処すべき。未成年を守りたいというのはわかるけれど、わたしたちは自分たちの意志でここにいるの。息子の頭には『バルサ』しかなく、フランスに戻ることなんて一度も考えたことがない。FIFAの処分は結局のところ、クラブではなく子供たちを罰している」

【次ページ】 守備陣の整備が必要なバルサは申し立ての準備中。

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