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エベレストはあなたに語りかけるか?
~世界最高峰を味わう2冊の写真集~ 

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

PROFILE

photograph byRyo Suzuki

posted2014/04/09 10:00

エベレストはあなたに語りかけるか?~世界最高峰を味わう2冊の写真集~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki

『Qomolangma』『Lhotse』石川直樹著 SLANT 各2800円+税

 世界最高峰の雪山に登る感触をあなたも味わってみないか?

 1977年生まれの石川直樹は冒険家であり、写真家でもある。今の時代に「冒険家」という肩書きを名乗る難しさとは裏腹に、23歳で七大陸世界最高峰の登頂を(当時の)史上最年少で達成した彼は、次々と未踏の領域に踏み入る旅を繰り返した。誰も見たことのない景色や風土を写真と言葉で伝え、21世紀における未知の伝達者となった石川。彼は、インターネット上の情報流布が包んでしまった世の中の既視感に抗うように、新陳代謝し続ける世界の先っぽを歩く。

「登頂成功」は登山の一部分にしか過ぎない。

 金沢の出版社SLANTが作った写真集『Qomolangma』(チョモランマ)は、そんな石川が23歳の時に初めて登り、その後の全てのヒマラヤ登山に繋がるエベレスト登頂をまとめたものだ。前半が'13年末から'14年初頭に旅したチベットの写真。後半部分が、'01年の登山時に撮った写真によって構成されている。

 僕たちは「登頂成功」という結果のみをニュースで聞くが、この本を眺めていると、それが登山の一部分に過ぎないことを痛感する。ベースキャンプに集まる2カ月分の食料の山。斜面にしがみつくように張られたテント。「ファーストステップ」と呼ばれる難関の壁面。朦朧としているのであろう、「死なないようにしなきゃ」と頭の中で何度も繰り返しながら頂上まで歩を進めていく石川。

 世界4位の高峰から眺めるエベレストを撮った『Lhotse』(ローツェ)と合わせて、彼の足取りを辿ってみよう。未知の山があなたにも語りかけるはずだ。

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