投球フォームが「縦長」か「横広」に見えるか。

　投球フォームというのは、縦に長く見えるか、横に広く見えるかで大きく違う。横に広く見えるのは、身体の開きが早いからで、つまり、打者に正対するのが早くなり、球の出所は見やすくなる。逆に、縦に長く見えるフォームは、打者に正対するのが遅く、球の出所が見にくい。金子はフォームが縦に長く見えるタイプで、さらに本屋敷コーチの言葉を借りれば「回旋スピードが速い」から、打者がタイミングを計りづらいフォームなのである。

　金子を取材していて感心するのは、自身のピッチングに対して、配球から打者の打ち取り方、7種類あるといわれる変化球を投げる意図までを説明できるところだ。それほど深く自身のピッチングを追求しているピッチャーといえる。

　シーズンが始まったばかりで好調というにはまだ早いが、開幕2戦目にしてベストピッチとも言えるこの日の投球は、昨季、パ・リーグの打者を圧倒した田中将大のピッチングを想起させるものだった。

昨年金子が投げた3455球の影響は？

　とはいえ、今季の金子に不安要素がないわけではない。

　それは、怪我の不安だ。

　これまでも、金子には常に怪我が付きまとってきた。本屋敷コーチも「入団の頃から、万全だったシーズンがない」と証言しているほどだ。また何かが、彼に起きてしまうのではないかという不安があるのだ。

　中でも懸念材料となっているのが、昨季、金子が1年間で投じた球数だ。

　昨季の金子の球数3455は、先発投手の中でもっとも多く、3000球を超えたのは他にメッセンジャーしかいない。過去に、涌井秀章（ロッテ）が2009年に3500球を超える球数を記録したが、その後の彼の不調具合を考えると、この影響が危惧される。

　本屋敷コーチはいう。

「キャンプから投げ込みには気を遣ってきました。今年はだいぶ減らしています。シーズンで投げることになるだろうから、と。開幕の登板後から2戦目まで、実は金子は一度もブルペンに入っていないんです。先発投手ではあり得ないことなんですけど、金子はそれだけの感覚と技術を持っている選手だからできました。ただ、ここまで順調にいきすぎているので、怖さはあります」

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