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知らないペップがそこには何人もいた。
~知将『グアルディオラ』の半生記~ 

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

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photograph byRyo Suzuki

posted2014/03/24 10:00

知らないペップがそこには何人もいた。~知将『グアルディオラ』の半生記~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki

『知られざるペップ・グアルディオラ サッカーを進化させた若き名将の肖像』グイレム・バラゲ著 田邊雅之監訳 フロムワン 1800円+税

 フットボールの翻訳本を読んで、この歯ごたえ。『I AM ZLATAN』以来である。イブラヒモビッチの本が、あらゆる意味でサッカー選手の自叙伝像を壊してしまったのは、既読の方なら納得してくれる事実であろう。文学たらんとした文学より、よっぽどエネルギッシュな人間の描き方と流れるようなストーリーテリング。そして、その本の中では、最も酷い言われようだったペップ・グアルディオラなのだが、彼自身の半生記では、あの軋轢がどう書かれているのか?

 というのが、最もわかりやすい本書への導線なのだろう。だが、その部分での魅力は氷山のほんの小さな一角に過ぎない。バルセロナから70kmほどにあるサントペドルの田舎から、ひょろっと痩せた煉瓦屋の息子がラ・マシアに入り、クライフ監督の黄金期を支える。そして、クラブの飽和と若手の台頭とともに、イタリア、メキシコへと渡り歩き、引退後に心のクラブに帰還。彼がバルセロナの監督に導かれるまでは、偶然と必然が美しく編み合わされた小説のようだ。

ペップの偶像と、拒み続けた彼のカタルーニャの血脈。

 最も躍動感あふれる描かれ方をするバルサ監督時代も、この物語は読者に対してあくまで誠実にすすむ。つまり、アンチ・バルサであっても、読めば腑に落ちる公平さを持ち合わせているのだ。

 つくられたペップの偶像と、それを拒み続けた彼のカタルーニャの血脈。メッシ・システムの弊害と滅私できなくなった中心選手との関係。悩み苦しみながらもペップには常に次の試合が押し寄せる。最後に決壊した彼の心が、なぜドイツに向かったのか? 読めば、わかる。

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