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テニス王国に育まれ、
躍進するダニエル太郎。
~NY生まれスペイン育ちのサムライ~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2014/03/12 16:30

テニス王国に育まれ、躍進するダニエル太郎。~NY生まれスペイン育ちのサムライ~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

チリ・オープン後の2月10日付け世界ランクで226位から190位に浮上したダニエル。

「ダニエル太郎は日本人だが生まれはニューヨーク。完璧なスペイン語を話すのは、スペイン・バレンシアに住み、練習拠点を置いているからだ」

 男子ツアーを主催するATPは、こんな書き出しで公式サイトに彼の記事を載せた。2月上旬、チリの大会で予選を勝ち上がり本戦準々決勝進出。初のツアー大会8強、それどころか本戦勝利さえ自身初だった。190cmの長身、英語とスペイン語を流暢に話す童顔の日本選手の躍進に、ウェブサイトの担当者は興味津々といった様子で文字を綴っている。

 アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、幼い頃は日本で暮らした。父親の仕事の都合で14歳でスペインに移住。言うまでもなく、世界ランク1位のラファエル・ナダルを生んだテニス王国である。ダニエルのクラブは、同4位のダビド・フェレールの拠点でもある。有名選手がいるとはいえ規模は小さく、米国・フロリダやスペイン・バルセロナの有名アカデミーに比べればいかにも片田舎のクラブ。だが、ダニエルは大きな所も試したうえで、ここを選んだ。

錦織が育った米国の競争社会とは真逆のスローな時間。

「強くなっても『わー、君、すごいね』とか、ちやほやされないので、それが選手にはいいと思うんです。練習は地味ですけど、コーチ一人一人のクオリティが高く、それもよかったと思います」

 スローな時間が流れるバレンシアが彼には合っていたのだろう。錦織圭が育った米国のアカデミーとは対極の環境と言える。あちらは世界各地から青田買いでダイヤの原石が集められ、結果を残した選手だけが生き残る競争社会。時にテニス選手育成工場とも揶揄される。ダニエルは錦織のような才気煥発タイプではない。その泥臭いスタイルと、1球をおろそかにしないスピリットは、バレンシアの赤土コートと家族的な雰囲気の中で、じっくりと熟成されるべきだったのだ。

「(チリの8強が)あり得ない結果だったとは思いたくない。自分の実力がこのレベルに到達していたのだと思います」

 下部ツアー参戦からの3年半で、盤石の土台を築いたという自負がそう言わせるのだろう。1月の全豪では四大大会の予選に初挑戦、本戦進出に王手をかけたが3回戦で敗れた。次の四大大会、赤土コートが舞台となる全仏では、一段上のステップに立てるだろうか。

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