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22億円分のハードル。
~田中とダルビッシュを比較する~ 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byAFLO

posted2014/03/05 06:20

22億円分のハードル。~田中とダルビッシュを比較する~<Number Web> photograph by AFLO

3月1日のオープン戦初登板では2回を投げて無失点3三振と上々の滑り出しを見せた田中将大。

 田中将大がヤンキースと交わした契約は、野球界の枠を超えた社会的なニュースとなった。7年総額1億5500万ドル。1ドル102円で換算すると158億1000万円だ。何より驚かされたのは1年目が2200万ドル(22億4400万円)に設定されていたことだ。

 過去、ポスティング・システムを使って米大リーグに移籍した大物選手が交わした契約を見ると、1年目は、総額の年平均より低く設定されている。ダルビッシュ有は550万ドル(5億6100万円)、松坂大輔は633万3333ドル(約6億4600万円)、イチローは566万6667ドル(約5億7800万円)だった。田中の1年目はダルビッシュの4倍。過去の例で1年目が一番高かった松坂と比べても約3.5倍だ。

 この金額に相応しい成績とは、どのようなものだろうか。このテーマについて、考え方は二つあると思う。一つは、過去の日本人投手の1年目と比較する方法。もう一つは、田中の年俸とほぼ同じ金額の投手が、どのような成績を残しているかに注目する方法だ。

 まず過去の日本人投手との比較を考えてみる。最もよい比較の対象は、米大リーグに移籍した時期も一番近いダルビッシュだろう。

'11年のダルビッシュは、昨年の田中と遜色ない成績。

●ダルビッシュ有と田中将大・成績と年俸比較
ダルビッシュ有
球団 年齢 S 回数 防御率 QS率 年俸
'11 24 28 18 6 0 232 1.44(2) 96% 5億円
'12 25 29 16 9 0 191 1/3 3.90(19) 62% 550万ドル(5.6億円)
'13 26 32 13 9 0 209 2/3 2.83(4) 66% 950万ドル(9.7億円)
'14 27 ――――――――――― 1000万ドル(10.2億円)
'15 28 1000万ドル(10.2億円)
'16 29 1000万ドル(10.2億円)
'17 30 1100万ドル(11.2億円)
田中将大
球団 年齢 S 回数 防御率 QS率 年俸
'13 24 28 24 0 1 212 1.27(1) 100% 4億円
'14 25 ――――――――――― 2200万ドル(22.4億円)
'15 26 2200万ドル(22.4億円)
'16 27 2200万ドル(22.4億円)
'17 28 ※この年のオフにFA、契約の見直しあり 2200万ドル(22.4億円)
'18 29 ――――――――――― 2200万ドル(22.4億円)
'19 30 2200万ドル(22.4億円)
'20 31 2300万ドル(23.5億円)
※( )内の数字はリーグ内順位。1ドル=102円で換算。QS=クオリティ・スタート(6回以上、自責点3点以内の先発登板)。年齢はシーズン開幕時点。

 田中の昨年成績は24勝0敗1セーブ、防御率1.27。先発投手の価値の指標「QS率(6回以上、自責点3点以内の先発確率)」は100%。日本プロ野球の歴史上でも最高の部類の成績だったことは間違いない。何しろ勝率10割で最多勝を獲得した投手は、過去に誰もいなかったのである。だから、1年目から22億4400万円というのも、合理的な評価だという考え方もあるかも知れない。

 だが、ダルビッシュが日本ハム最終年('11年)に残した成績も、内容をよく見ていくと昨年の田中に決して引けを取らないものだ。18勝6敗という勝敗だけを見ると、24勝0敗とは段違いに見えるが、そうではない。この年のダルビッシュは防御率1.44で、QSでなかった登板は1度だけ(QS率96%)。6敗の中には9回自責点1で負けた試合が1度、8回自責点1が2度あった。勝ち負けがつかなかった試合の中にも9回自責点1が1度、7回自責点0が1度ある。味方打線がほんの少し打っていれば、20勝以上、3敗以下という成績でも、不思議はない内容だった。

【次ページ】 メジャー1年目から“ダルビッシュ以上”を求められる。

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