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スーパーボウル1試合でCM300億円!?
放映権料で考えるスポーツの「価値」。 

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並木裕太

並木裕太Yuta Namiki

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posted2014/02/26 16:30

スーパーボウル1試合でCM300億円!?放映権料で考えるスポーツの「価値」。<Number Web> photograph by AP/AFLO

30秒CMの広告費が4億円にものぼる化け物コンテンツ、スーパーボウル。リアルタイムで観戦したい、というスポーツの特性を存分に生かしたからこそ、現在の地位がある。

各球団の考え方、テレビ局との特殊な関係性。

 そして今、パ・リーグTVは新たなステップに入ろうとしています。それぞれ自前の映像配信システムを持っている巨人と阪神が、パ・リーグTVとの映像提携に乗り出したのです。これによって、パ・リーグTVに入会すれば、交流戦のみという制限付きながら、巨人と阪神の主催試合も見られるようになりました。

 しかし、こうした動きがセ・リーグ全球団、つまりは12球団一体となった取組みにつながるかといえば、その可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

 各球団の考え方もありますし、テレビ局との特殊な関係性も簡単に断ち切れないのが実情です。一部の球団に関しては、放送権を持っていない(手元に置いていない)という現実もあります。複数のテレビ局に権利を渡してしまっているため、球団が試合の映像をネット配信しようと思えば、テレビ局が作った映像を買い戻していることも想定できます。こうした歪んだ体制が続くようでは、リーグ一体で何かをやろうとしても非常に難しいわけです。

インターネット事業は、テレビと食い合わない。

 インターネット事業については、テレビの視聴者が奪われるという意見もありますが、パ・リーグTVの視聴者の半分は「外出先」で利用しており、そのうち2/3はスマホで見ています。これは決してパイの食い合いではなく、むしろマーケットの拡充につながることを意味しています。

 私が2011年に、プロ野球オーナー会議に参加した時、実はこのネット放送を提言しました。あるオーナーから「テレビ放送と競合して、視聴率がますます下がるのではないか」というコメントを頂きました。

 その時、私は「家の大きな画面のテレビで観たい試合が放送されていたら、わざわざスマホの小さい画面で観る人はいません。今のプロ野球に必要なのは、面積なのです。プロ野球ファンでない一般的な日本人が、プロ野球に触れる面積が必要な時です。畑が狭まっている今、面を広げてから刈り取りを考えるべき」とお話をしました。

 MLBAMの700億円の規模にすぐになるとは思いませんが、その後スタートしたパ・リーグTVの売上が6億円に到達したと聞いた時は、日本プロ野球にとって偉大な一歩が踏み出され、のれんに腕押しかと思われたオーナー会議での議論も、いつか実りの時を迎えるのではないかと勇気づけられました。

 今NPBには、競技運営を滞りなく行う協会型の形から、事業会社化を急速に進めてほしいと思っています。プロ野球は筋書きの無いドラマであり、真剣勝負です。その存続のために、リーグがしっかりと事業でドラマと勝負を支えていく、そんな正しい形に日本のプロ野球が変化していくことを望みます。

(構成:日比野恭三)

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