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「一緒にメダルを獲るならこいつらと」
日本ジャンプ陣、笑顔と涙の銅メダル。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2014/02/18 11:35
スキージャンプ団体(ラージヒル)で銅メダルを獲得した、左から清水礼留飛、竹内択、伊東大貴、葛西紀明。
全員が130mジャンプを記録し、2組を残して首位に。
1番手を担った清水は、持ち前の思い切りのよさを発揮し、2本ともに130m台のジャンプをそろえ、その役割を果たす。
2番手に起用された竹内もまた、1本目こそ同グループの中の上位に差をつけられたが、2本目で130.0mを飛び、後続につなげた。
1本目で130.5mを飛んだ伊東は、2本目で132.0mと飛距離を伸ばした。だが、膝はもうぎりぎりの状態だった。着地後の伊東は足を引きずっていた。
伊東の2本目が終わったところで日本は3位。
残すは葛西の1本のみ。スタートを切る。1本目に続き、134.0mで残り2人を残して1位、表彰台を確定させた。
優勝したドイツと2位のオーストリアに抜かれ、最終順位は3位だったが、選手たちは喜びを爆発させた。
フラワーセレモニーに向かう足取りも痛々しかった伊東は、こう打ち明けた。
「(膝は)ほんとうに痛かったです。終わるまで痛いって言いたくなかった。辛かったけれど、膝が持ってよかったです」
涙がこぼれた。
「あきらめないで頑張れば、メダルは獲れるんだと伝えたかったです」
と言う竹内は「やめた方がいい」と言わず、後押ししてくれた周囲の人々に感謝を告げると、泣いた。
清水は持ち前の明るさのまま、笑顔でこう語る。
「先輩たちが苦労して、頑張ってくれたおかげで獲れたメダルだと思っています」
個人の銀でも見せなかった涙があふれた葛西。
葛西の目からは、ラージヒルで自身初めての個人種目での銀メダルを獲っても流すことのなかった涙があふれた。
チームメイトたちの抱える状況を知っていたからこそだった。だから、「メダルを獲らせてあげたかったのでよかったです」と、涙を流した。
そして葛西の次の言葉は、ソチ五輪のジャンプ男子日本代表がどのような空気に包まれていたのか、彼らがどのような関係を築いていたのかを象徴しているのかもしれない。
「一緒にメダルを獲るならこいつらだと思っていました」
長野五輪以来、16年ぶりとなる団体でのメダル。
それは、個々の選手がそれぞれに事情と思いを抱え、それが互いの力ともなり、そして思いがひとつに結集してつかむことのできた、かけがえのないメダルだった。