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浅村栄斗、打点王の先に見据える物。
叱責が「レオの天才肌」を強くした。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/02/04 10:45

浅村栄斗、打点王の先に見据える物。叱責が「レオの天才肌」を強くした。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

昨年はチームで2位となる14盗塁を成功させた浅村栄斗。伊原新監督の下で、昨年以上の成績を残すことができるか。

懲罰交代の翌日、大きな転機となった「4番・浅村」。

「あの時期は守備をしているのが怖かった。いつもガチガチになってプレーしていたんで、大事なところでエラーをしたこともあったし、とにかく自信がなかったんです。だから、攻めていかなければいけない場面で体がうまいこと動かなくて攻めきれなかったり。今になって思えば、ショートを守っていたことで完全にストレスを抱えていましたね」

 ただ、「人間万事塞翁が馬」という故事があるように、ショートを守るという不幸が、結果的に浅村栄斗という野球選手を育てる上で、幸運をもたらしてくれたことも事実だった。

 翌日の試合から浅村は4番になった。

 渡辺監督の狙いとしては「カンフル剤」。それが見事にはまった。当初こそ戸惑いを見せていたが、4番に座るようになって浅村から迷いが消えた。それは、本人もはっきりと認めている。

「あの試合がなかったら、多分4番は打っていないと思います。最初は『あの時のミスを取り返そう』と思いながらやっていましたけど、そのうち、あんまり守備に気を使うことがなくなりましたね。もともとバッティングには自信を持ってやっていたんで、エラーをしても『バッティングで取り返せばいい』と気持ちを切り替えられるようになりました」

今季から伊原監督の下、セカンドにコンバート。

 31日のヤクルト戦でサヨナラ弾を放つなど、4番・浅村は早くも結果を出した。

 6月21日のオリックス戦で左肩を負傷しても、痛みを軽減させるために右方向への打球を意識し続けたことによって体の開きを抑えられ、スイングの瞬発力も高まった。

 才能への過信と指揮官の愛のムチによって芽生えた意識改革は、様々な副産物を与えてくれた。浅村の覚醒は、必然だったのだ。

 今季から監督が伊原春樹に代わりセカンドへのコンバートが決まった。伊原は機動力野球を標榜していることもあり、これまでとは違う野球も求められるだろう。

 だが、今の浅村の心はもうブレない。「気を抜いたらレギュラーを奪われる」という危機感もプラスに転換できている。

【次ページ】 いつの日か清原、中島らが背負った「栄光の3番」を。

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