ブックソムリエ ~新刊ワンショット時評~BACK NUMBER

紫の炎はあなたの人生と交錯する。
~『サンフレッチェ情熱史』を読む~ 

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

PROFILE

photograph byRyo Suzuki

posted2014/01/26 08:10

紫の炎はあなたの人生と交錯する。~『サンフレッチェ情熱史』を読む~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki

『サンフレッチェ情熱史』中野和也著 ソル・メディア 1600円+税

 その炎は、闇があるからこそ、明るく光る。残り2試合で勝ち点差5という状況から、奇跡的な2連覇を果たしたサンフレッチェ広島は、暗き道の果てに、ようやく今の場所まで辿りついた。

 サンフレッチェ広島のオフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』の編集長が描いた広島の強さの本質へと迫る一冊は、決して身内贔屓でも、自慢話でもない。

 Jリーグを制覇したチーム史上、最も低予算だった2012年の彼ら。そんなサンフレッチェが、相手の対策やACLの強行日程に翻弄されつつも連覇を達成したことは、どうやら奇跡ではないようだ。そこには何らかの明白な理由があり、本書の目的はそれをあぶり出すこと。

チームの岐路に当事者としてぶつかったからこその熱。

 何度も訪れる経営危機。伸び悩む観客動員。売られてゆく主軸選手。2度も経験するJ2への降格。暗黒ともいえる時代を何人ものプレイヤーや指導者、そして経営者たちが必死に覆そうとする。

 京都パープルサンガに移籍した森保はなぜ期限付きでのレンタルだったのか? 降格したペトロヴィッチ監督はなぜ続投したのか? 広島のあの時を懐かしく振り返るのも愉しい読み方にはなるだろうが、チームの岐路で下した大きな決断は未来のための物語となっている。

 サンフレッチェ広島の持つ「継続する情熱」をキーワードにしながら、書き手の中野和也は正面からぶつかった。チームを外から神様的視点で観るのではなく、現場の当事者として人と摩擦する。そんな場所にこそ火は熾るはずだ。

 すべての人にとって他人事じゃないチームは、強い。

関連コラム

関連キーワード
サンフレッチェ広島

ページトップ