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徐々に効いてくる「10番」の重圧。
本田圭佑よ、フリーキックを譲れ! 

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細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byGetty Images

posted2014/01/26 08:15

徐々に効いてくる「10番」の重圧。本田圭佑よ、フリーキックを譲れ!<Number Web> photograph by Getty Images

本拠地サンシーロでのデビュー戦で、ゴールからやや左寄りの位置のFKでも、本田はキッカーを譲らなかった。

 マッシミリアーノ・アッレグリ前監督の解任は、本田圭佑にとって不都合に思えた。その根拠は、今から3年前の記憶にある。

 2010年12月8日、本拠地ジュゼッペ・メアッツァでチャンピオンズリーグを観戦した。グループリーグ最終節の相手はオランダのアヤックス。しかし、すでに決勝トーナメント進出を決めていたミランにモチベーションはなく、「勝てば3位」でヨーロッパリーグに舞台を移すアヤックスを相手に2失点を喫し、あっさりと敗れた。

 しかし翌日、ミランの練習場「ミラネッロ」は活気にあふれていた。

 ミラネッロはミラノ中心部から車で40分ほど走ったところ、まさに郊外といった感じの丘の上にある。入口正面にある2階建てのクラブハウスはこぢんまりとして、瓦作りのような屋根のせいか、それとも無造作に敷き詰められた石と松に似た木々のせいか、日本人にとってはどこか親しみやすい。16万平方mの敷地にはピッチ6面に加え、世界的に有名なリサーチセンター「ミランラボ」や、かの名将アリゴ・サッキがゾーンプレスを叩き込んだというフットサルコートと同程度の広さのピッチもある。

 敷地内を一周してメインピッチ脇の屋根付きベンチに案内されると、選手たちが次第に姿を現し始めた。試合翌日の軽めのトレーニングにしては、十分すぎるほどの熱がある。その中心にいたのがアッレグリだった。

明るい雰囲気に包まれていた、ミラネッロでの練習風景。

 センターサークル付近から小さくパスをつないでサイドに展開し、クロスに合わせてシュートを打つ。そんなシンプルなトレーニングを、アッレグリは自ら声を張って盛り上げた。

「ヘイヘイ! ザンブロー!」

 イニャツィオ・アバーテが右サイドから絶妙なクロスを上げ、そこにジャンルカ・ザンブロッタが勢い良く走り込む。しかし豪快なボレーが明後日の方向に飛ぶと、アッレグリは笑顔で叫んだ。するとトレーニングは明るい雰囲気に包まれ、ザンブロッタも自分がネタになることの意味を知ってか知らずか、再び巡ってきたシュートシーンでも明後日の方向に大きく蹴り上げた。

「ザンブロー!」

 アッレグリが再び叫ぶと選手たちがどっと笑い、センターサークルに戻ってくるザンブロッタの頭をポンポンと叩いた。

【次ページ】 想像をはるかに超える、背番号10の重圧。

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