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柏木、槙野、森脇、そして西川、李。
浦和の“広島化”の裏にあるもの。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO

posted2014/01/18 08:15

柏木、槙野、森脇、そして西川、李。浦和の“広島化”の裏にあるもの。<Number Web> photograph by Kenzaburo Matsuoka/AFLO

広島のJ1連覇、天皇杯準優勝に大きく貢献した西川周作。失点数29は全クラブ中最少。56失点の浦和で、来季はどれだけの結果を残すのだろうか。

ペトロビッチの招聘が、全ての始まりだった。

 浦和には、それが堅守速攻型であろうとポゼッション型であろうと、確固たるスタイルが必要だった。“広島化”に舵を切ったのはここからである。

 2012シーズン、それまで広島で6シーズンにわたって指揮を執っていたミハイロ・ペトロビッチを招聘。代名詞とも言える3バックシステムに加え、攻撃的なポゼッション型を明確な特徴とするペトロビッチを監督に指名したことは、当時の浦和にとって非常に的確な人選だったと言える。

 当然ながら、ペトロビッチは自らのサッカーを一刻も早く実現させるための補強に動いた。

 まずはケルンでくすぶっていた広島時代の教え子である槙野智章を獲得し、イングランドのレスター・シティーで挑戦を続けていた阿部勇樹を呼び戻す。選手たちの口からは新体制下における充実感が表現されるようになり、結果、後半戦の取りこぼしが響いたものの3位でシーズンを終え、5年ぶりにACL出場権を獲得するなど目に見える変化と効果がもたらされた。誰もが、浦和の復活を予感した。

槙野、森脇、柏木、そして西川。広島化は止まらない。

 しかし、ペトロビッチはさらなる強化に余念がなかった。

 昨シーズン開幕前にはかつて槙野とともに広島で3バックを形成した森脇良太を獲得。最終ラインに槙野と森脇、前線に柏木、指揮官にペトロビッチ、さらに“メディア側”から見ればペトロビッチの右腕である通訳兼コーチ・杉浦大輔の存在も「広島化」のクローズアップに拍車をかけた。

 ところが、昨シーズンはシーズンを通じて優勝争いの主役を張りながら、終盤に急失速して6位でフィニッシュ。失点「56」は全18クラブの成績においてもワースト6位タイの多さで、守備の立て直しは明らかな課題として浮き彫りになる。

 そこで今季、浦和は西川に声を掛けた。もちろん広島の連覇に貢献した国内屈指のGKであり、足下の技術において抜群の評価を得るGKである。加えてペトロビッチのサッカーを知り尽くしているのだから、ターゲットとして浮上するのは当然のことだ。「浦和の広島化」がクローズアップされる中で移籍を決断した西川の複雑な心中は想像に難くないが、一人のプロ選手として、条件面で自分を高く評価するクラブがあればそこに挑戦するのは自然である。

【次ページ】 特徴的なスタイルには、それを熟知した選手が必要。

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