日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER

「団結力」で閉塞感を反動に変える。
ザックが惨敗の遠征を静観した理由。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/01/13 08:11

「団結力」で閉塞感を反動に変える。ザックが惨敗の遠征を静観した理由。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

批判を受けることもありながら、W杯へ向けて着々と手を打ってきたザッケローニ。全ての審判が下る本大会まで、あと半年だ。

最大の危機は、10月の欧州遠征だった。

 そんなザックジャパンに最大の危機が訪れたのが、10月のセルビア、ベラルーシ遠征だった。

 セルビアに0-2で敗れ、ベラルーシにも0-1で黒星を喫した。

 これまで2試合続けて無得点で負けたことはなかった。コンフェデレーションズカップでもブラジルに0-3で大敗した次のイタリア戦では敗れはしながらも、3点を奪っている。「団結」があるからこそ、チームには「切り替える力」があった。

 しかしこのときは切り替えられなかった。

 こういう場合、指揮官はフットバレーなどレクリエーション色の強い、みんなで盛り上がるメニューを練習に取り入れるのだが、その効果もこのときは見られなかった。終盤に長身のハーフナー・マイクが投入されても、チームは高さを活かそうとすることなく、細かいパス回しにこだわってしまって指揮官の狙いと噛み合わない場面も見られた。

 選手たちのなかにも内容を突き詰めるべきといった意見もあれば、逆にもっと結果にこだわったほうがいいとの意見もあった。チームが一つに向いているとは言い難いような印象を受けた。選手だけが集まってミーティングも開かれたようだが、打開にはつながらなかった。

指揮官は、なぜ異変に対して動かなかったのか。

 筆者が気になったのは、何よりも「団結力」を重んじるはずの指揮官が動かなかったことだ。

 2012年5月、W杯アジア最終予選3連戦が始まる前、練習試合の内容が悪かったことでメンバーを集めて叱り飛ばしたことがあった。「ムチ」で引き締めた後、今度は「練習の負荷を減らしてほしい」と疲労を訴えた選手たちの要望を受け入れる「アメ」もあった。オマーンに3-0、ヨルダンに6-0と“ロケットスタート”に成功したのも、チームを一つにさせるマネジメントがあったからだろう。

 コンフェデもそうだった。ブラジルに敗れた後、キャプテンの長谷部誠を呼び出して、組織で戦う大切さを再確認させたという。チームはそこで理念を再共有し、イタリアを追い詰めたのである。

 異変を敏感に察知できる指揮官が、なぜ行動を取らなかったのか――。

【次ページ】 「課題を浮き彫りにするため」の、敢えての静観。

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