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突きつけられた厳しい現実。
第一線を退く「期待の星」。
~テニス・田川翔太、22歳の岐路~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2014/01/10 06:10

突きつけられた厳しい現実。第一線を退く「期待の星」。~テニス・田川翔太、22歳の岐路~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

2013年全日本で準決勝まで進出した田川。自己最高647位で世界との戦いに終止符を打つ。

 早稲田大でインカレ3連覇、全日本選手権では2011年と'13年に2度の4強入りを果たした田川翔太が第一線を退いた。卒業後は保険会社に就職する。実業団のリーグ戦に出ることはあっても、世界に挑むつもりはないという。

 '11年の全日本、デビスカップ代表の杉田祐一をストロークで粉砕した3回戦は衝撃だった。これほど強くたたける選手がいたのかと誰もが目を見張った。翌年は学生大会の合間にサーキットを回り、世界ランクを647位に上げる。彼が世界で活躍する姿を想像すると楽しかった。173cmと小柄だが、フォアの破壊力で勝負する。そのギャップに驚く海外の大男たちが目に浮かぶようだった。

 しかし、あの一戦を超える試合はなかなかできなかった。その残像を追い求めてフォームを崩したこともある。

 2年前を振り返って田川は言う。

「プレッシャーもなく、のびのびやっていて、一番強かった」

 就職すると決めたのは、世界100位の壁に気がついたからだ。

「200位台や100位台後半はステップアップの先に見えてくるが、100位以内に行くには今まで以上に努力しなくてはいけない。そう考えると苦しいなと」

「さびしさとやりきった気持ちが混在しています」。

 大学時代は追い込めるだけ追い込んだ。

「死ぬほど苦しい思い」をしながら土橋登志久監督と練習した。監督に殺される、そんな思いを抱くほど厳しく怒られた。だから今の彼は、引っ張って引っ張って、しまいに弾力を失ったゴムのような状態なのだろう。錦織圭、添田豪、伊藤竜馬と日本男子3人が世界ランキング100位を突破し、後続を勇気づけたとはいえ、100位の手前には険しい坂道が続いていることに変わりはない。もっと頑張れないのかと聞くのは酷だろう。

 最後の全日本は準決勝で敗退。記者会見のあと、田川は小さな声でつぶやいた。

「あー、終わった」。

 1カ月経ち、心境を尋ねると「(テニスを離れて)さびしい気持ちと、やりきったという気持ちが混在しています」。カムバックについては「わからないです」。 後ろ髪引かれる思いもあるのかもしれない。まっすぐ前だけ見て歩いていく者ばかりではない。何度も振り返り、名残惜しそうに去っていく者もいる。22歳の岐路とは、おそらくそういうものなのだ。

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