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箱根駅伝の向こう側を知るコトバ。
~生島淳・著『箱根駅伝コトバ学』~ 

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

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photograph byRyo Suzuki

posted2013/12/24 06:00

箱根駅伝の向こう側を知るコトバ。~生島淳・著『箱根駅伝コトバ学』~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki

『箱根駅伝コトバ学』生島淳著 ベースボール・マガジン社 1300円+税

 新年の風物詩をコトバから読み解く。正月の2日、3日と言えば、箱根駅伝。NHKラジオをかじるように聴いたオールドファンから、駅伝なんてこの時期しか見ないけれど、という新参者まで、誰もが一本のタスキに集中し、手に汗を握る学生スポーツの極点のひとつだ。

 本誌でもお馴染みのスポーツライター生島淳にとって何と7冊目の箱根駅伝本となるこちら。「箱根駅伝害毒論」からスタートしたその著作連は、監督に焦点を当てたもの、区間配置や戦略を語るものなどを経て、駅伝がまとう空気や人を語るものへと軽快に変化した。

「タスキ」や「小田原中継所」、「学連選抜」など、箱根駅伝に直接ひもづくコトバもあれば、「遺伝子」、「夫婦」など、なんのことだろう?と瞬時には判断のつかないコトバもあわせて40ワード。1本4枚という原稿量を決めたノックのように、多種多様な球が打ち出されてくる。さあ、どこからキャッチしよう?

箱根以外の「363日」を知れば、駅伝が心により深く響く。

 それぞれの短い文章は、気張りなく読み易いが、推進力にも充ちている。まるで「柏原くん」のランニング・フォームのようだが、長いあいだ駅伝を凝視した者だけが綴れる軽やかさと、箱根の磁場の重みが不思議と同居する。

 そして、箱根の頂点を目指す、選手たちのバックヤードももうひとつの読みどころだ。「夏合宿」に持参する昔懐かしいカルピス原液。「卒論」と練習の佳境が重なり、てんやわんやの4年生たち。

 彼らの走りを1年の2日しか見ない者も、残る363日をコトバから知れば、より駅伝は胸に深く響くはずだ。

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