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綱取り場所で稀勢の里は
「またか」の声を拭えるか。
~2横綱撃破、九州場所の再現を~ 

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

PROFILE

photograph byKYODO

posted2013/12/25 06:00

白鵬に上手投げで土をつけた稀勢の里。7000人近い観客からは10度も万歳の声が起こった。

白鵬に上手投げで土をつけた稀勢の里。7000人近い観客からは10度も万歳の声が起こった。

 1年納めの九州11月場所を前に、稀勢の里はこう述懐していた。

「2ケタ勝って地元茨城に帰っても、『残念だ』と言われてしまう。ここ一番という勝負どころで負けるから、そのイメージが先行するのか、『またか』と言われるんですよねぇ」

 そう苦笑しながらも、自分に言い聞かせるように、さらに言葉を繋げた。

「そこを無くして皆さんをガッカリさせないよう、大事な一番で勝てるような精神力をつけなきゃいけませんよね。ホント、特にこの1年は一番一番の重みをズシンと感じています」

 日本人横綱待望論が出て久しい。盤石の横綱である「白鵬キラー」としても、その期待を一身に背負う稀勢の里。大関昇進から、はや2年の月日が経った。同僚大関の琴欧洲、琴奨菊、鶴竜が精彩を欠くなか、稀勢の里が9勝に終わったのは、昇進2場所目のたった1度だけ。常に10勝以上の勝ち星を挙げているのだ。それは稀勢の里なりの「密かな矜恃」となってもいるようだ。それでも周囲の大きな期待に応えられない自分を、はがゆく思うことがあるか――と問うてみた。

「いい緊張感を持って、来年をいい年にできれば……」

「それは多少ありますね。でも、毎日、毎場所、いい発見ができている。今まで何も前に進まないで来たってことはないですから。大関に上がってから、その点では特に充実しているんですよ」

 そうポジティブに答えていた姿が、脳裏をよぎる。そして迎えた11月場所。2横綱を撃破し、白鵬戦では土俵際で投げを打ち合い、上手投げで横綱を裏返す。館内には万歳コールが沸き起こり、大歓声を浴びた。13勝2敗で「優勝に準ずる成績」とされ、来年初場所は7月名古屋以来、2度目の綱取りとなる。12月の巡業中、リラックスする「横綱候補」に、「この白鵬戦は自信になったか」と投げ掛けてみた。「まあね」と一言つぶやき、ニヤリと大胆不敵な笑みを浮かべる。綱取り再挑戦の心境について、こう語った。

「1度経験してるしね。緊張して体が動かなくなるなんてことはない。ただ、いい緊張感を持ってやりますよ。まぁ、また来年を、いい年にできれば……だね」

 クールな口調に力の宿った目線で、再びニヤリと笑顔を見せる。わずかに膨らんだその小鼻だけが、内に秘めた意気込みを溢れさせていた。

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