ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER

「See You On The Trail」
4200km踏破で見えたもの。 

text by

井手裕介

井手裕介Yusuke Ide

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photograph byYusuke Ide

posted2013/12/13 10:30

「See You On The Trail」4200km踏破で見えたもの。<Number Web> photograph by Yusuke Ide

4200kmを踏破し、PCTのゴール地点に辿りついた井手くん。

やっぱり最後はきつく、辛かったが……。

 とにもかくにも、やっぱり最後はきつかった。辛かった。逃げ出したくてたまらなかった。自分の心の弱さが情けなかった。手はかじかみ、靴は凍り、カメラは一部壊れてしまった。

 Lucky Manはこちらから頼まない限り、助け舟を出してはこない。それがなんだか、とても嬉しかった。昨年歩き通すことが出来ず、今年リベンジにやってきた彼は、強い信念を持った、紳士的なバックパッカーだった。

 そんな彼と共にカナダにたどり着けたのが、本当に嬉しい。

一人旅をするのは、きっと出会いを求めているからだ。

 5カ月に及ぶ歩き旅。元々経験値の浅い僕は、どんどん怖いものが増えていった。その多くは悪天候に由来するものだが、経験を積むということは、恐怖の対象を増やしてしまうことなのかもしれない。それでも、恐怖は訓練によって飼い殺すことが可能になる。

 怖いもの知らずで日本を飛び出していった頃が懐かしい。序盤の砂漠では極力人を避けて静かにキャンプをしたがっていた。サイドトリップで寄ったヨセミテヴィレッジでは、人の多さに辟易とした。

 それでも、何度も道に迷い、怖い思いをした後に、僕が求めていたのは、人だった。

 孤独が好きだから一人旅をするのだろうか。いや、きっと違う。一人旅をするのは、きっと自然な形での出会いを求めているからだ。

 孤独が好きだから山に行くのか。おそらく、それも違う。自分と向き合える時間を持つことは、真の友情を持つうえで、とても大切なことだ。

 ロングトレイルの旅での醍醐味は、自然と人里とを行き来することかもしれない。この半年に及ぶ旅で僕は気づけた。人が大好きだということに。

【次ページ】 旅を通して出会った、それぞれの人生のその後。

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