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ソチ出場の可能性を「将軍」に託す。
無良崇人、全日本にかける熱き想い。 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAFLO

posted2013/12/11 10:30

ソチ出場の可能性を「将軍」に託す。無良崇人、全日本にかける熱き想い。<Number Web> photograph by AFLO

グランプリファイナル出場は逃したものの、全日本一本に照準を合わせ、逆転のソチ出場を狙う。

「『将軍』で表現の質をつめていきたい」

「実を言うと、カナダの前から(『将軍』に戻す可能性を)言ってはいたのですが、やってみて評価を得てから決めようと思っていました。でも戻してよかったと思う。やってみて、いかに『将軍』が自分に合ってしっくりきているか、再確認できました」

 もっとも久しぶりに滑ってみて、まだまだ滑りこみが足りないと感じたという。

「ステップなどはまだレベルが取れていないし、表現的な意味で振付の細かいところをつめていきたい。とりあえず今やろうとしているところは、プログラムのレベルアップと基礎的なスケーティングを改善すること。それによってジャンプもよくなってくると思うので、基本的なところをやり直したいなと思っています」

コーチである父に対する感謝の念を新たに。

 無良が指導を受けているコーチである無良隆志氏は、本人の実父で、かつてシングル、ペアの両方で日本代表として世界選手権に出場したキャリアを持つ。日本に限らず二世、三世スケーターというのは少なくなく、現在の男子でいうなら小塚崇彦、織田信成などもそうである。だが親がコーチであるというのは、子供の頃から氷に慣れるという意味では有利な一方、もちろん良いことばかりでもないらしい。

「反抗期でかみあわず、会えば喧嘩という時期もありました。そのため他の先生にお願いしたということもあった。でも今は普通に同じ環境にいることが、お互い落ち着いていられます」

 そういう無良自身も家庭を持つ身となり、2013年5月には女児の父親になった。自分が親になってみて、初めてその大変さを実感し、改めて親に対する感謝の気持ちもわいてきた、という。

「毎日練習で家に帰って顔を見るだけで、明日も頑張ろうという気持ちになる。存在自体が大きく、自分のやる気に影響していると思います」

 たまたまこの会見の日、ちょうど生まれて半年なのだ、と嬉しそうに笑顔を見せた。

五輪出場は全日本選手権のメダルが必須。

 GPファイナル進出を逃した無良がソチ五輪の代表に選ばれるためには、全日本選手権でメダルを取る以外に道はない。厳しい状況であることはわかっているが、家族に自分が五輪に到達した姿を見せることがモチベーションなのだという。

「僕が滑っている曲がかかっていると、寝てても起きたり、泣いていても泣き止んだりすることなどが結構ある。(娘に)自分がその舞台に立っている姿を見せてあげたいという気持ちはすごくあります」

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