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ゴールドシップの生まれ故郷~ユニオンオーナーズクラブ参画出口牧場~ 

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posted2013/11/29 19:15

ゴールドシップの生まれ故郷~ユニオンオーナーズクラブ参画出口牧場~<Number Web>

ジャパンカップが終わり、季節を先取りした街角にはクリスマスツリーが飾られる頃になりました。今年1年、どんなことがあったのかなと振り返り、感動のレースや名場面、楽しかった出来事をふんわりと思い出して、幸せな気分になるにはちょうどよい華やかな装いに街は変わってゆきます。
北海道の馬産地では、秋から少しずつ続けていた牧場内外の冬支度も終わり、長く厳しい冬に備えて、よりいっそう毎日の健康管理に気を配る日々が続いています。
生産牧場の共同体であるユニオンオーナーズクラブに参画している日高町賀張にある出口牧場でも、11頭の繁殖牝馬とともに冬を迎える準備は整いました。

2012年の皐月賞、菊花賞とクラシック2冠馬となって同年の有馬記念を優勝し、その年の最優秀3歳牡馬に選出されたゴールドシップの生まれ故郷である出口牧場。
2013年には宝塚記念を制しG14勝目。創業50年の老舗牧場生まれのゴールドシップは、強い馬づくりに情熱をかたむける日高の夢を次々に叶えてゆきました。
朗報を聞いた日高町長が出張先から急遽駆けつけ、3代目の出口俊一社長を祝勝したほど、その喜びは大きなものであったことがうかがい知れます。クラブに提供した馬は、この夏函館でデビューした2歳馬ヴォルカヌス(父スウェプトオーヴァーボード、母イフリータ(母父フレンチデピュティ)がおり、家族経営の牧場ながらG1ホースを輩出した実績は、この先も若馬たちにも引き継がれていくでしょう。

ゴールドシップの父は、日高を中心として種牡馬の頂点に立つステイゴールド(父サンデーサイレンス)。母は、今や希少になりつつあるメジロマックイーン産駒のポイントフラッグ。彼女の血統を遡ると、下総御料牧場の基礎輸入牝馬の1頭である星旗がおり、日本の由緒ある伝統母系であることがわかりました。

ステイゴールドとメジロマックイーンの配合は最強の黄金配合ともいわれ、ドリームジャーニー(有馬記念、宝塚記念、朝日杯FSなど)やオルフェーヴル(3冠競走、有馬記念、凱旋門賞2着2回など)といった個性豊かな大物スターホースを輩出して評価を高めています。

父の仔は基本的に芝の良馬場で切れ味を発揮するレースを得意としていますが、ゴールドシップのように超一流産駒になると、渋った馬場も上手にこなすという資質も持ち合わせ、そこにパワーのあるメジロマックイーンの配合がさらにその能力を強靭なものにしているようです。皐月賞では、前日に降り続いた雨の影響もあり、馬場の良い所を走ろうと大外をまわった馬たちの中で、たった1頭内を突く力強い競馬をみせてくれました。

その後もゴールドシップは、神戸新聞杯で長く使える脚をみせ、強い馬の代名詞である菊花賞を堂々と制しました。ひょっとすると、この頃から、彼の持ち味であるロングスパートが確立したのかもしれませんね。

ひと雨ごとに、冬の訪れを予感させる寒空の下。今年15歳になった母ポイントフラッグのお腹には、今年もステイゴールドの仔が宿っています。
「とにかく無事に生まれてくることだけですよ」
出口社長の声は、馬産地の自信と力強さに直結しながらも、どこか祈るような重厚感がありました。
ゴールドシップは生まれた時は栗毛色をした仔馬だったそうで、1歳の秋に育成牧場に移動する頃には母や祖父と同じ今の芦毛に変わっていたといいます。ちょっぴりヤンチャで、それでいてピンクの鼻先が愛らしい顔。しかし勝つ時は豪快な印象で競馬ファンを歓喜に湧かせる彼らしい不思議な逸話ですね。
この冬は私も出口社長と一緒に、ポイントフラッグの健やかなママさんライフと安産を祈りたいと思います。

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プロフィール
上坂由香(エッセイスト)

札幌市生まれ
初めて買った馬券が的中し(ウオッカの日本ダービーで馬単)ビギナーズラックが実在すると身をもって証明。
38歳から乗馬もはじめ馬産地や牧場・乗馬クラブを訪ねては馬と戯れ馬に乗る。
「夜間放牧」と称して飲み歩き知らないおじさんと競馬の話をするのが好き。

第6回Gallopエッセイ大賞受賞
週刊Gallop「競馬の流儀」リレーコラムを連載中
道新オントナWebコラム連載中

JBIS-Searchと競走馬ふるさと案内所とのコラボ企画、競馬女子部として活動中
競馬女子部ブログ→http://girls.jbis.or.jp/

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