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距離の壁を乗り越えて
武豊が打ち立てた金字塔。
~天才を象徴するGI通算100勝目~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byYuji Takahashi

posted2013/12/01 08:00

距離の壁を乗り越えて武豊が打ち立てた金字塔。~天才を象徴するGI通算100勝目~<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

GI通算100勝を記念して京都競馬場が用意した「百勝」の日本酒の瓶を笑顔で掲げた。

 今春、3200mの天皇賞で2着と好走したトーセンラー(牡5歳、栗東・藤原英昭厩舎)は、言うまでもなく2000m以上の中長距離路線においての一線級である。そしてもうひとつに、京都競馬場の外回りコースで最大級のパフォーマンスを発揮できるという特徴的な馬だ。

 牡の古馬が挑戦できる京都外回りのGIは、天皇賞(春)とマイルチャンピオンシップの2つ。ちょうど2倍と極端に距離が違う両レースだが、藤原調教師はコース適性を重く見てマイル参戦を考えた。京都1800mでデビューし、以来距離を延ばしながら素質も伸ばしてきていた馬だけに、相談を受けた武豊騎手でさえ一瞬言葉に詰まる思いがしたそうだ。

 しかし、「真意を理解できた瞬間、ピンと来るものがありました。ジャパンカップに行くぞ、と言われるより勝つ可能性はマイルの方がずっと高いと感じて、気がついたら、『いいですね』と即答していました」と当時を振り返る。

トーセンラーとともに人馬一体となってマイルCS制覇。

 そうと決まれば話は早い。1周1800mのCWコースで行なっていたトレーニングを、800mの坂路コース主体へと大胆にチェンジ。平地でゆったりと折り合いをつけて走らせるのではなく、坂路で前半から強い負荷をかけることでスピードと瞬発力を磨くことに調教方針を切り換えたのだ。

 その成果が目に見えて明らかだったのだろう。水面下では賛否両論あった極端なシフトチェンジに対しても、武豊だけは終始一貫して「面白い試みだと思うし、成功の予感は十分ある」と、藤原師を援護するコメントを続けていた。

 そして最高の結果が出た。「凄かった。あんな脚を持っていたなんて」と、乗っていた武豊も驚く抜群の切れ味を発揮したトーセンラーは、馬群を切り裂いての快勝。藤原師も「馬も人も全てがパーフェクト。今回、この挑戦が実ったことには重要な意味があると思う」と、人馬のパフォーマンスを絶賛した。

 武豊にとっては、これがGIレース通算100勝の区切りにもなった。JRAで68勝、海外で7勝、地方交流での25勝を合算しての前人未到の足跡。「長年かけて、いろんな場所で積み重ねてきた数字。これはもう、素直にうれしい」と、まだまだ若い44歳が胸を張った。

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